河畔に咲く鮮花
第二章 九輪の花 1:初夜の刻印
* * *
「左から語学・生け花・お茶・お琴・着付け・ダンス・書道・発声練習・テーブルマナー・教養・舞踊・社交術・礼儀作法・ウォーキングレッスン・ワインソムリエ・メイクアップ……」
雪から紹介された講師達は、頭をさげて蘭に挨拶をするが顔と名前が全く頭に入ってこないのが正直な感想だった。
たくさん講師がいすぎて覚えきれないというのが本音だ。
戸惑いはするが、レッスンが始まるとあまりの忙しさに考える暇もなくなる。
一日のスケジュールが分刻みで進行していき、一時間ごとに講師が変わっていって宿題を出していく。
雪がパーティに呼ばれているようで、蘭も一緒に出席させる為に詰め込んでいるのだと講師の一人が言っていた。
――パーティなんて、そんなの無理
蘭に焦りが生じるが、講師から小さなパーティだから失敗しても大丈夫とご気楽な返事が戻ってくる。
それでも不安が消えることはない。
初めて習う作法は蘭にとっては難しく、講師に厳しく叱られることばかり。
御飯を食べる時でさえ食べ方の礼儀作法を教えてくれた。
高級な和食御膳だったが、講師の厳しい指導に何一つ味が分からなかった。
ようやく講師達から解放されたのは、夜の十時を回った頃である。
「はぁ……疲れた……」
本当はそのまま寝入ってしまいたかったが、メイドに風呂に入るよう指示されて、出れば雪の待つ寝室へと言付けされた。
――それって一緒に寝るってことであって……
覚悟はしていたが急に胸がどきどきと高鳴る。
改めて初夜を迎えると思うと、風呂に入っている間も落着きがなくそわそわとしてしまう。
意味もなく浴槽から立ち上がったり、座ったりを繰り返したり。
二度も念入りに体を洗ったりと体を終始動かしていた。
――冷静に、冷静に
蘭は気を沈めようと自己暗示をかけながら、簡易な着物に袖を通す。
自室に戻るとすでに明かりは落とされ、寝室からは仄かな光が漏れていた。
「あ、あのお、入るね」
ぎこちない喋り方になってしまったと蘭は顔をしかめる。初夜を意識して声が上ずっていると気がつかれては雪にからかわれる。
「おう、入れよ蘭」
だけど雪は気にしていないのか、明るい声をかけてくる。蘭はほっと安堵の息を漏らして寝室の障子をそろりと開けた。
ベッドに座っている雪より意識が向いてしまったのは、簡易な椅子に腰をかけている人物達。
蘭は目は丸くすると口を思わず開けてしまう。自分でもまぬけな顔をしていると思ったが、止められなかった。
そこにはともに秀樹、義鷹がいたのだ。
暖色に灯された室内にくつろぐように座っている面々を見て呆然としてしまう。
「ら、蘭ちゃん。はろ〜。ああ、やっぱり女の子やったんや。かわいいなぁ」
蘭の胸中も知らず、秀樹がだらしなく鼻の下を伸ばし、緩い感じで手を振ってきた。
「蘭おねーさん、久しぶりだね」
続いてともがばちりと片目を瞑ってウインクしてくる。
義鷹だけはすぐにスイっと視線を逸らせて、前方を見やった。
蘭ははぁと頷くだけで、なにがあるのか分からずに首を緩く傾げた。
「蘭、こっちに来い、初夜を始める」
雪があっけらかんと言い放つが、蘭には理解が出来ない状況だ。
「で、でもみんなは? 何の為にここにいるの?」
蘭の質問も最もな意見だろう。雪は何でもないようにさらりと答えた。
「こいつらに初夜を見てもらう。俺と愛し合う蘭との姿をな」
雪は平然と言ってのけるが、蘭は口が開くばかりだ。
「そんなっ、そういうのって人に見せる行為じゃないと思うけど」
蘭はたまらずに言い返すが、雪もその他の面々もお互いは一瞬顔を見合わせる。
「……蘭おねーさん。僕達御三家は結婚したら初夜を滞りなく済ませたっていうのを証明してくれる見届け人ってのが必要なんだよ」
ともが何も問題がないと言った風にあっさりと説明をしてくれる。
「まぁ長年の付き合いやから〜、俺たちが見届け人っちゅうことで」
秀樹がにへっとふやけた笑いをして、またひらひらと手を振ってきた。
「そういうわけだ蘭。早く来い」
雪がベッドから座ったまま、手を差し出して蘭を呼んだ。
「そ、そんなぁ……」
蘭は、逃げ出したい気持ちを抑えてその場に佇む。まさか覇者の御三家にそのようなしきたりがあるとは知らなかった。
「大丈夫、大丈夫。明かりも落としてるし、そんなに見えんから、なっ」
秀樹はフォローを入れてくれたようだが、それでも真っ暗というわけではない。
「もう少しだけ明かりを落としてやる」
雪はパネルを操作して部屋の明かりをまた一段階落とした。
さきほどより暗くなり、微弱な明かりだけが室内を照らす。
秀樹達の顔に影が落ちて、濃い陰影が刻まれた。
「やばっ、テンションあがってきたわ」
秀樹は一人で昂揚しているのか、そわそわと体を動かし、ぎしりと椅子を鳴らせた。
そんな秀樹も目に入っていないのか、義鷹は表情の一つも変えずに座っている。
「蘭、この時をずっと待っていた」
雪の気持ちは真っ直ぐに蘭に届いてきて、不思議と周りの目も気にならなくなってきた。
ふらふらと雪の元へ歩んでいき、差し伸べられた手をそっと掴んだ。
「蘭……俺のモノになれ」
雪の熱を帯びた視線が絡んできて、蘭の気持ちは昂ってくる。
――ようやく、雪と最初を迎えられる
蘭は女として、花嫁として抱かれる喜びを感じて、しっかりと雪の手を掴んだ。
「蘭っ」
雪は待てないのか蘭を引き寄せて、ベッドに押し倒した。
「雪……んっ……」
見つめあったのは一瞬で、すぐに雪の顔が落ちてきた。
暗がりの中で重なる影――
熱く優しい唇に塞がれて、蘭の胸はジンと痺れる。
蘭を欲し、必要とするキスは徐々に深くなり、濃厚になっていく。
久しぶりに味わう雪のキスに溺れて、蘭の欲情は掻き立てられる。
「今は、俺だけを見てろ」
雪は熱っぽく囁き、またすぐに唇を塞いできた。
雪の熱い舌が歯列を割り蘭の歯を丁寧になぞる。
ねっとりとした濃厚な口づけに、みんながいるのも忘れて夢中になった。
「……蘭、うまい……お前の唇は……」
雪が舌を付け根まで差し込んできて、唾液を絡め取るように激しく貪る。
「……んっ……雪っ……はげ……し……」
蘭は息も切れ切れで、雪の荒々しい獣のキスを受け入れた。
長く官能的なキスを終えて、雪はすぐに蘭の首筋を吸ってくる。
「んっ、痛いっ……雪っ……」
蘭の白く滑らかな首筋にチリッと小さな痛みが走り、雪が落とした赤い花びらが咲く。自分の跡をつけて、雪は満足そうに微笑んだ。
「蘭の体に俺の跡をたくさんつけてやるから」
雪はすぐさま鎖骨を舌でなぞり着物の帯を解いた。
はらりと着物は左右に開かれ、蘭の白い胸が露わになる。
「……蘭、綺麗だ。お前はなによりも」
雪が熱に浮かされたように言うと、蘭の胸を揉み上げ乳房にも赤い花びらを次々に散らしていく。
「ああっ、蘭っ、やっぱりお前の肌は滑々して、この手に吸いついて気持ちいい……」
雪は乳房を揉みしだくと、次にはすでに感じて尖った両の蕾を指で摘まんだ。
「ああっ……んっ……」
久しぶりに雪の手による愛撫を受けて、蘭は歓喜に打ち震える。
捏ねまわされたり、押しつぶされたりして、蘭は早くも息を乱してもだえた。
「やらしい……な……こんなにびんびんにおっ勃てて。もう、こりこりに尖っているぞ、蘭?」
雪が扇情的な眼差しで蕾を弄る姿を見て、体の奥の――女としての器官が疼いてくる。
うっすら汗を掻いて、首元にはりつく髪の一筋をとっても雪は美しくなまめかしい。
これほどに雄々しく美しい男に抱かれると思っただけで、心が打ち震えてしまう。
「蘭っ、おいしそうだ、ここを食べさせろ……」
その色気を帯びた顔が覆い被さってきて、蘭のこりこりに尖った蕾を口に含んだ。
雪の粘ついた熱い舌が敏感な蕾をいやらしく転がす。
「ああっ、雪っ……すご……い」
蘭の口から甘い息が漏れて、悩ましく腰をくねらせた。
雪はその反応を見て、蘭の蕾をちろちろと舐め上げわざと音を立てる。
最終的には強く吸いついてきて、蕾をちゅぽんと弾いた。
「あっあっ……雪っ……」
蘭はあまりの快楽にみんながいることも忘れて声を漏らす。
「蘭……気持ちいいか……見ろ、俺が舐めたから、濡れている……」
間近に迫る雪の端正な顔が意地悪い笑みを浮かべ、唾液で濡れた蘭の蕾を指の腹で捏ねまわした。
舐められた胸の突起は赤く充血して、いやらしく艶めいている。
それが何よりも淫靡に見えて、蘭の脳は甘美に蕩けていった。
「もうここがぐっしょりじゃないか、蘭」
雪の手はいつの間にか下肢に伸び、ショーツの上から淫唇をなぞった。
「ンっ……雪っ!」
一番敏感な芽を擦られて、蘭は甲高い声を上げたまま体をのけぞらせた。
雪はその反応を見てにやりと笑い、秘裂に指を添わせて上下に焦らすようにゆっくりとなぞった。
くちゅりと淫猥な音を立てて、ショーツ越しに蜜が粟立つ。
「……いつもより濡れているな、蘭。みんなに見られて興奮しているのか?」
雪の言葉で蘭は夢心地から我に返る。今まで、みんなのことは忘れていたのに、急に思い出して恥ずかしさが増した。
「……なぁ、蘭、言えよ。みんなの前でここを弄られて、いやらしく濡らしていますって……」
雪に嗜虐的な言葉を投げられて、蘭の体はぞくぞくと震える。そんなことを言われて恥ずかしくて嫌なはずなのに、秘部からは蜜がじゅくっと溢れ出した。
「ああっ、やっぱり蘭はいやらしいな。どんどん溢れてくるぞ……ほらっ、ここ」
雪が情欲めいた声を漏らして、秘裂を間を擦りあげてくる。
もっと早く動かせて欲しいのに、わざと焦らして雪は蘭の反応を堪能しているのだ。
「蘭の綺麗なところ、みんなにも見てもらおうか、な? 抱けない分、目の保養にしてやってもいいだろ?」
何の冗談かと思ったが、雪はショーツを無理やり剥いで、蘭の秘部を晒した。
雪はすぐに背後に回り、自分の膝の上に乗せた。
「どうだ? 恥ずかしいか蘭」
雪の艶っぽい息遣いが後ろから耳元をくすぐり変に興奮を覚える。
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