河畔に咲く鮮花  

第三章 第二十六輪の花 1:綾門院和葉


 開かずの間で秘密の情事を見た次の朝から、食卓にアユリの姿を見なくなった。
 どことなく沈む蘭に公人は心配そうにしてくれたが、どうしても昨日のことが忘れられない。
 志紀もなにも語ってはくれない。
 真樹子ともどう顔を合わせていいかが分からず、蘭は激しく落ち込んだ。
 蘭はふらりと歩いて、いつの間にか和葉の家まで来ていた。
 年上の女性に甘えるというのは浅慮な考えかもしれないが、他に頼れる人が蘭にはいなかった。
「あら、嬢ちゃん。いらっしゃい。何かあったの?」
 いつもの妖艶な笑みを浮かべ、和葉は家の中に招いてくれる。
 その変わらぬ態度が蘭の気持ちをほだしていく。
「あら、また悩み事? 困った子ねぇ」
 和葉が滑らかな手つきで蘭の頬をこしょこしょとくすぐった。
「か、和葉さんくすぐったいです」
「ふふふ、だってからかったら可愛いんだもん」
 和葉はペットぐらいだと思っているのか、蘭をつついたり、撫でたりといちいち反応を見てくる。
「もっとじゃれていたいんだけどねぇ……ちょっとお仕事があるみたい」
 和葉が急に真剣な顔をして、はぁと艶かしく溜息をついた。
「和葉さんってそういえば、何の仕事しているんですか? それに正式な名前は何ですか?」
 和葉について何も知らないと思い、ここぞとばかりに質問する。
 この時間なら里の者は仕事を割り振られ、何かしら働いているものだ。
 なのに和葉はいつ来ても、家にいるように思える。
「あら、名前知らないの? 綾門院和葉よ」
 驚くほど立派な名前を聞かされ、正直驚いてしまった。
 「なんか、まるで貴族みないな名前ですね」
 そう言うと、和葉はふっと微笑みやれやれと一つ溜息を吐き出す。
「嬢ちゃんだって貴族なんでしょう? もし私が貴族でも驚くことないじゃない……でも間違いかしら……嬢ちゃんからは貴族っぽい匂いがしないわ」
 和葉の目がすうっと細められ、じっと見つめてくる。
 心を見透かされそうで、蘭は居心地が悪くなった。
「ねぇ、本当に貴族か調べていいかしら」
 えっと思った瞬間、和葉の手がするりと胸に落ちてくる。
「か、和葉さんっ?」
「ふふ、反応で分かるのよ……それとも、あの綺麗な弟君に同じようなことしようかしら」
 公人にされるなら自分がされた方がましだと思い、ぶんぶんと頭を振る。
「き、公人君にはしないでください……私なら大丈夫ですけど」
「ふふ、殊勝なことね。じゃあ、良く見せてもらおう」
 和葉は蘭の着ていたブラウスのボタンとぷちり、ぷちりと外していき、露わになった白い肌をじっと見つめてくる。
「はぁ……綺麗ね……」
 和葉の方が綺麗なのにとおぼろに考えていたが、すぐにブラを外され驚いてしまう。
「やっぱり若い子は張りがあって、いいわぁ」
 和葉が白い乳房をやんわりと揉みしだき、指先で薄づいた蕾をそっと弾く。
「ンっ……」
 刺激が強くて思わず甘い声を出したのを和葉は見逃さない。
「可愛い……ちゅっ……」
 和葉がさっと顔を埋めて、ちろりと細い舌が蕾を舐めた。
「か、和葉さん――」
 驚いて声を上げるが、和葉は止めようとしてくれない。
 口に含んでそっと優しく転がしてくる。
「ンっ……ちゅっ……」
 引っ張られて、ざらりとする舌の感触にどんどんと蕾は尖りを帯びてきた。
「興奮してきたの? ふふ……可愛い」
「も、もう、からかうのは止めてください、和葉さん」
 蘭は胸を腕で庇うと、和葉はさっと手を伸ばして秘部をまさぐる。
――こ、この人……素早い……
 あまりの早さに何が起きたか分からず、目をぱちくりとしている間、和葉の指がショーツをなぞっていた。
「あっ……えっ? いつの間に……和葉さんっ……あっ……」
 秘裂の間を指が何度も往復して、陰唇がぴったりとショーツに浮き上がる。
「あら、ここも硬くなってきたわね」
 つんと尖りはじめた先端を指で押し潰され、肩がぴくんと跳ね上がってしまった。
「濡れてきたわよ……嬢ちゃん……いやらしい子」
 艶を帯びた和葉の唇が半円を描き、指がもっと激しく上下に動く。
「駄目ですっ……そこは……」
 和葉がにやりと笑い、尖りきった淫芽を指の腹で何度も揉み回した。
「あっ……」
 女の器官を熟知している愛撫は、すぐに快楽に落されそうで怖くなる。
「か、和葉さんっ……」
 顔を赤らめ、後退するがすぐに和葉が距離を詰めて執拗に捏ね回した。
「イカせてあげようか? 嬢ちゃん」
 耳元で囁かれてぞくっと寒気を催すが、理性を保ち突き放した。 
「だ、駄目です。もう」
 秘部を弄んでいた指がぴたりと止まり、すっと離れていく。
「ふふ……そうね。あんまりするとアタシもシタくなっちゃう」
 蘭のショーツに滲んだ粘りのある蜜を指に絡めた和葉はそれをねっとりと舐めとった。
「も、もしかして……和葉さんって……同性好き?」
 それが事実であれば、和葉が志紀に興味を示さない理由が分かる。
 たどたどしく聞く蘭を見て、和葉はにっこりと笑った。
「まさか……異性が好きに決まってるじゃない」
「あ……そうなんですか」
 蘭が思ったような返答が得られず、釈然としない。異性が好きなら蘭はからかわれたと知ってほっとした。
「アタシはあんたみたいな可愛い嬢ちゃんが好きなの、男としてね」
 さらりと言った和葉に蘭は一瞬だが思考が停止した。
――お、と、こ?
 そう聞こえた気がして、視線をゆっくりと向けると和葉がばっと下肢を見せつけてきた。
 下着が下ろされ、そこには興奮して立派に勃ちあがったモノが張り付いていて――
「お、お、男――!!?」
「見れば分かるでしょ、ほら。嬢ちゃんを触っていたら、こんなになっちゃった」
 和葉はにこやかに笑いながら、自身のモノをびくんと跳ねさせる。
「今からでも続きしたい――けど、時間がないわぁ、残念」
 さっと下着をつけて和葉はふふふと小首を傾げて笑った。
「あ――やばいわねぇ。嬢ちゃん……ちょっとだけ眠っていて」
「――は?」
 和葉の鋭い瞳がカッと見開くと同時に、とんっと軽く額を押された。
――え……
 体がふらつき、あっという間に床に体が倒れ込んでいく。
 和葉が体を支えてくれて、瞼を閉じてくれた。
「おやすみ、嬢ちゃん」
 和葉の優しい声が届き、蘭の意識は一気に沈んでいった。
『いつまで、寝ているんだ!』
「あっ、ごめんなさいっ! 志紀っ!」
 がばりと上体を起こすが、周りには誰もいない。






 





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