河畔に咲く鮮花  




 「おいおい、あんまりするとそのガキ、骨折っちまうぜ」
 春はふっと口の端だけで笑い、逃れられない獲物にゆっくりと近寄って来る。
 それはまるで肉食の獣が、ゆったりと小動物をいたぶるような動き――。
 片方から覗く流麗な瞳には残忍な色が刻まれ、捕食した蘭をなぶろうとする春に恐ろしさを感じずにはいられない。
 すっと伸びてきた腕に、蘭の心臓は大きく飛び跳ねる。
 春は蘭の首からかかっているネックレスを引っ張って、じっと目を落とした。
「ふうん、これかと思ったが、どうやら覇王の刻印が入ってないな。高価なものだろうが、お目当てのものじゃない」
 春が少し残念そうに呟くのを聞いて蘭はほっと息を吐く。これは蘭が幼少の時に初恋の相手、貴族のお姉さんから貰ったものだ。
 違うと分かって、気は済んだだろうか。そう思って安堵の息を吐いたのも束の間――。
「唯、後ろで手を縛り、こっちに向かせろ」
 ぎょっと蘭は目を剥くと春の妖艶で、残酷に笑む顔を見た。
 うすら寒い恐怖が全身を駆け抜け、蘭の歯の根ががちがちと鳴る。
 唯はすぐに自分の制服のネクタイを取って、蘭の両手を後ろで縛り上げる。
 ぎゅうっとあまりにも強く締められて、蘭は苦痛に顔を歪ませた。余分に余ったネクタイの端を持たれ、まるでリードに繋がれた犬のように扱われる。
 それでも蘭は春の方を向き、精一杯に睨んで見せた。
「放せっ!」
 春に噛みつくように体をねじるが、唯に後ろからネクタイを引っ張られて動きを封じられる。
「くっくっ、なかなか威勢がいいな。まぁ、時間はまだある。ゆっくりいこうぜ」
 春はこの趣向に興じる笑いをあげながら、蘭の制服の上着のボタンをゆっくりと外す。はっと蘭は体を強張らせてその様子を凝視してしまった。はらりと上着が開け放たれ、白いシャツが露わになる。
 シャツの下にはさらしが巻いてあるが、これ以上触られたり、脱がされたら終わりだ。蘭は女とばれない為に、また必死で体を使って暴れる。
 だが春は愉快な様子でそれを見ているだけ。どれだけ暴れても絶対的な主導権は春にあるのだ。
 散々暴れて蘭は息を乱し、ぜぇぜぇと肩で息をする。
「もう、いいか?」
 蘭が疲れたところを見て、春は皮肉げに笑うと続きを開始し始めた。シャツのボタンが外され、はらりと左右に開かれる。
 その瞬間、余裕ぶっていた春の顔に初めて驚愕が刻まれた。


――知ってしまった、春は蘭が女だということを知ってしまったのだ。


 蘭は緊張で口の中に溢れた唾をごくりと飲み込んでしまう。その音がやたら、この静かな空間に大きく響いて――春は瞬時に目を細めた後、くっと忍び笑いを喉の奥で漏らす。
「どうしたんだ、春?」
 蘭を見たまま身動きしない春を不思議がり、唯は後ろからネクタイを引っ張りながら問いかけた。
「こいつ、女だ」
 目を細めて薄笑いを浮かべる春にぞっと背筋が凍る。
「え? ほ、本当か?」
 唯が自分の方にネクタイを引っ張り、蘭を引き寄せた。蘭の背に唯の逞しい胸板が当たる。
 はらりとはだけたシャツを上から覗きこみ、唯はごくりと喉を鳴らした。
「わ、悪かったな、さっきはきつく抱きとめて。体が痛かっただろう? おい、骨は折れてないよな」
 唯は急に心配げな声を漏らし、蘭の背中や腕を丹念に見回した。
「くっくっ、蝶子も人が悪い。姫のお遊びは趣向が凝っているな」
 蝶姫の本来の計画を察したのか、春は残忍に笑いながら、赤い舌をちらりと唇の隙間から覗かせた。
「ど、どうするんだよ、春。女を虐める趣味は無いぞ」
 余裕の春とは違い、唯は焦っているようで、女と分かった蘭の扱いに困っている。
「虐めじゃなくみんなで楽しむならいいだろ? 蝶姫からの献上物だ」
 蘭の瞳には驚きが刻まれ、一瞬だが呼吸が止まる。
 はっきりと春の目には、情欲と獣めいた雄の熱が滾っていた。蘭の呼吸が大きく乱れ始めて、ぞくりとした寒気を催す。
 心臓が早鐘を打ち、もう平静を保っていられない。
 やはり下慮――どうあってもこの運命からは逃れられない。蘭の胸中は絶望と失望がないまぜとなり、激しい悪寒に体が打ち震えた。
「なぁ、お前、織田とはそういう関係なんだろ?」
 春がのんびりとそう言って、蘭のさらしをぐいっと引っ張った。
「あっ――」
 さらしがはらりと解けて、蘭の胸をゆっくりと露わにしていく。
「無駄よ、私になにをしても雪には打撃を与えられない」
 蘭は負けずにそう言い返した。だけど春はどこ風吹くな態度だ。
「ふうん、それはやって見なきゃ分からない」
「本当よ、私は下慮。下慮如きに雪は心を痛めないわ」
 春の目に驚きが浮かぶが、それはすぐに好奇に移り変わった。
「くっくっ、おもしろい、下慮をずっと傍にか。あいつは変わり者だな、やっぱり」
「分かったでしょ、だから無駄よ。意味のないことはしないで」
 春はゆるりとポケットから小さな瓶を取り出し、蘭の目の前で蓋を開ける。
「これ以上、物を言うとその口塞ぐぞ」
 春は脅しをかけて言ったつもりだろうが、蘭にはそんなものは効かない。
「だから、無駄だって言っているでしょ」
 春は薄く笑うと、手に持っていた瓶の液体を口の中に含んだ。
 そして春はぐいっと蘭の顎を力強く掴んで持ち上げる。その瞬間、春が言った通りに唇を塞がれると、歯列を割って液体を口の中に無理やり注ぎ込まれた。
――ごくり
 蘭はその液体を流し込まれ、喉の奥まで飲みこんでしまった。
「な、なにを飲ませたの?」
「下慮には高くて買えない、媚薬さ。覇者や貴族はそういうのを使用して、遊興に興じる。飲ませてやっただけありがたく思え」
 春は悪びれもなく言ってにやりと口の端を上げた。
 媚薬という意味が分からず、蘭は顔をしかめて、自分の体の変化の様子を見る。
 だが、何も変わることはなく不可解に思っていると、それは突如起こった。
 ――どくり
 心臓が大きくひと跳ねすると、徐々に体が熱くなってくる。それはあっという間に全身を駆け巡り、息も乱れてきた。
「な……なに……これ……」
 蘭の体は内側から燃えるように滾り、乾きにも似た感情の波が押し寄せる。
 下肢の奥も熱く燃え始め、じんじんと痺れてきたのだ。
「くっくっ、どうだ? これ、最高級の媚薬だぞ。顔が上気してきたな。効き目がそろそろ回って来たか」
 薬……媚薬とはそういう薬。蘭が飲まされた媚薬は意識とは別に否が応でも、その気にさせるものだ。
 みるみる変化していく体の様子についていけず、蘭の頭はぼうっと霞んでくる。
「おい、春。大丈夫か? なんだか様子がおかしいぞ」
 すぐ後ろにいる唯の声も遠くから響いてくる気がする。目は熱を帯びて潤むと、視界まで滲んできた。
 体はますます熱くなり、全体的にむず痒さまで生じてくる。
「……はぁっ……はぁっ……」
 息を乱していやらしい声を漏らしているのが、自分から出ている声とも分からずにうつろな視線を春に向ける。蘭はぼんやりと滲む視界で見つめながら、体を徐々に支配してくる昂ぶりを抑えられなくなってくる。
「いいだろう、これ? 時間はあるからたっぷり三人で楽しもうぜ」
 妖艶に笑う春が近付き、蘭の唇を味わうようにべろりと舐め上げた。
――ぞくりと全身が粟立つ。
 キスを軽くされただけでも、蘭は過剰に体が震えた。  
「いい女だ」
 春の手が伸び、蘭の一つに束ねた髪を解く。ばさっと髪が舞い上がり、腕や頬を掠めていくだけで、敏感に体が反応した。
 朦朧とする意識の中で、ねっとりと春の唇が蘭の口内を侵す。激しく音を立てて春が吸いつき、歯を丁寧になぞっていく。
 ゆっくりと丁寧にキスをされるだけで、蘭の足はぶるぶると震え、立っていられなくなる。
「ここだけじゃ満足しないだろう? 見ろ、唯。媚薬を飲んだだけで、ここがびんびんに尖っている」
 春は意地悪く笑って、蘭の両胸の尖りを指先で軽く摘まんだ。
「はぁっ……ああ……っ」
 摘まれただけで全身に心地良い痺れが走り、しなやかに背中をくねらせる。くっくっと喉の奥で笑いながら、春は指で捏ねまわして、蘭の反応を楽しんだ。
「なぁ。お、俺もしたい」
 唯がその様子を見て、荒い息を吐き出し、蘭の後ろから声をかける。すでに唯の大きく硬くなったものが、蘭のお尻を痛いほど突きあげていた。
「唯、その柱に縛ってこっち来いよ」
 蘭は唯に立たされたまま、部屋の中心に剥き出しになった梁の柱に縛られて体を固定される。
 唯は蘭を縛り付けたままさっと正面に周り、あらわな姿を見て、ごくりと大きく喉を鳴らした。
 唯は恐る恐る蘭に顔を落として、肉感的な唇を触れ合わせる。
「……ああ、柔らかい……」
 うっとりと艶を帯びた声を漏らし、唯は続けて蘭に唇を落とした。たどたどしい動きで唯の舌が口内に差し込まれ粘膜をなぞる。
 ぬるついた舌が絡まってきて強く吸い上げられると、蘭の背中にぞくぞくと寒気に似た快感が這い登っていく。
「んっ……こっちもうまいぞ、唯……」
 一方で春はいつの間にか蘭の右胸の尖りを口に含んで舐めていた。
「お、俺も舐めたい」
 唯の意識は唇から胸に向くと、待ちきれないように飛び付いて、容赦なく尖りに吸いつく。
「……んっ……いた……い」
 唯の吸い付きが思ったより荒々しくて、蘭は身をぶるぶると小刻みに震わせた。
「童貞は仕方ないな。俺が教えてやるから、その通りにしろ」
 右胸を舐めながら、春は目の端だけで唯に視線を投げる。
「わ、分かった、春」
唯の答えを聞いて春はにやりと笑い、わざと舌先を差し出しすと尖った蕾をちろりと上下に舐めた。それを見て、同じように唯が舌を出し、蘭の左胸の尖りを舐め始める。
「っ……ンっ……」
 二人に同時に舐められ、淫靡な快楽が背筋を這い、蘭はがくがくと足を震わせた。媚薬のせいで感じ方がいつもの倍以上になっている。それを両方で責められたら、あっという間に胸だけでも達しそうだった。
 二人の男がくちゅくちゅとと音を立てて、両胸の尖りを吸いあげている様はとてつもなく淫猥だ。その雰囲気だけでも酔ってしまい、蘭は乱れた吐息を漏らす。
「こうやって、揉みながら優しく吸えよ」
 春が右胸を下からすくいあげて、やんわりと揉みしだく。そのリズムに合わせて、器用に蕾もちろちろと舐め上げた。
「わ、分かった」
 唯も同じように大きな手の平で蘭の左胸を持ちあげて、ちゅうっと蕾に吸いつく。
「……んんっ……」
 激しく二人に責められ、蘭は熱い滴りを下肢から溢れさせた。
「くっくっ、今度はこっちだ」
 春は蘭のズボンを強引に剥ぎ取り、下肢を露わにさせる。蘭のショーツはすでにぐっしょりと濡れそぼり、淫唇を張りつかせていた。
「見ろ、いやらしいな。ショーツから形が分かる」
 春はそう薄く笑うと、唯は食い入るような目で蘭の淫唇を凝視した。その熱い視線だけでも興奮して、下肢からじゅくりと淫らな蜜を溢れさせる。
「あそこの椅子を持ってこいよ、唯」
 春が命令し、唯がテーブルに設置されていた椅子を持って来る。
 柱から解放されたが、今度は椅子の膝かけ部分に両足を広げて座らされた。 
 両手は後ろで縛られて、身動きが出来ない。
 広げられた両足からショーツを剥がされ、すぐさま蘭の秘部は二人の男の目に晒された。






 





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