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エゴイストな夜 side4ー13 【綾子と速水の大人な恋!?編】




***


 そしてまた春が巡る季節になり――
 時は流れて。 
 目覚めた桜ちゃんは私の勧めにより、定時制の高校に通うことになった。
 もちろん、私達が勤めている高校なので速水も安心しているようだ。
 この頃は速水が桜ちゃんにつきっきりでなかなかデートが出来ていなかったが、久しぶりに誘われる。
 雰囲気のいい店に入り、ワイングラスを傾ける。
「それで、桜がな……最近正樹君と上手く言っていないみたいで」
「……はぁ……」
 あんたは父親かと言いたいところだが、過保護な速水も愛しく思えた。
――速水って実は世話焼き?
 それでも速水が色んなことを綾子に相談してくれることが嬉しい。
「正樹君って受験なんでしょう。だったら仕方ないじゃない」
「そうだが、桜が心配していてな」
「まぁ、確かに……写メ見せてもらったけど格好良いよね、正樹君」
 桜ちゃんとも話すようになった私は自慢げに見せてもらった正樹君の顔を思い出す。
 爽やかで清廉だけどどこか憂いを帯びた少年は、危うげな魅力によって女を惹きつけるのだろう。
 しかも一途で誠実ときたら、女はそういう人に愛されたいと思うに違いない。
――確かに……あれはモテるだろうな……
 よく告白されているようだし、桜ちゃんが不安になるのも分かる気がした。
「ふふふ、そういうことなら一肌脱ごうじゃないですか……」
 私は不敵な笑みを浮かべてぐいっとワインを飲み干す。
――二人の絆を深める作戦立てないと……ふふっ
「おい、綾子……お前は関与するな。二人の問題だ」
 速水は嫌そうな顔をするが、結局いつも悪役を買うのは私の仕事だ。
「はい、はい」
 その場限りの身のない返事をして、速水を軽くあしらう。
――そうだ、いい考えが思い浮かんだわ
 このまま黙っていられないとほくそ笑んでいる私にすっと四角い箱が差し出された。
「お前は全く……ほら、受け取れよ」
「なに、これ?」
 私は首を傾げながらそれを受け取り、しげしげと眺める。
ジュエリーボックスのようで、私の指先は微かに震え始めた。
――嘘……まさか……
 心臓がばくばくと高鳴り、はやる胸を何とか無理やり抑えつける。
「開けていい?」
 緊張で上ずった声で速水に確認を取った。
「ああ」
 淡々と放つ速水の了解を得て、私はごくりと唾を飲み込みボックスを開いた。
 そこにあったのは、美しく光るダイヤモンドの指輪で――。
「これって……」
 私は指輪を取り出し、照明に透かしてうっとりと見つめる。
 同時にじん――と胸の内が熱くなった。
――本当に……指輪……
「婚約指輪だ」
 速水がふっと微笑み、顎をくいっとしゃくってきた。
 つけろ――と聞こえて私は恐る恐るくすり指に指輪を嵌めた。
 ぴったりと嵌る指輪が美しく光り、私の瞳にうっすらと涙が浮かぶ。
――私、最近涙もろいわ……
 それは、今までくれたどんなものより、私にとっては価値があるものだった。
「ありがとう……」
 照れくさくてもじもじと身じろぎながら速水を見ると、顔を真っ赤にさせている。
――速水も照れているの?
「喜んでもらって……良かったら……」
――良かった……ら? 
 ワインをぐびぐびと飲む速水の体が微かに揺れている。
――まさか……
「速水……もしかして酔っているの?」
 指輪を渡すのが恥ずかしくてワインを飲み干した速水はどうやら酔ってしまったらしい。
「全く……呆れた……素直じゃないんだから」
 それでも速水からの愛を感じて、私は微笑んでしまう。
「いつまでも追ってやるから」
 速水にこぼすと、くすりと笑われる。
 私は指輪に視線を落とし、きらきら光る美しさに目を奪われて――。
 すぐに顔を上げて速水ににっこりと笑いかけた。
 私の笑顔はきっと弾けるような笑みだろう。
 これからも速水を支え、危なげになれば私が軌道修正してあげよう。
――私をここまで惚れさせたんだから。一生、ついていってやるからね
私は、速水と幸せになることを心から誓い、もう一度にっこりと微笑む。
それは桜が美しく咲き誇る、暖かく眩しい春の季節のことだった。








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