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エゴイストな夜 side4ー2 【綾子と速水の大人な恋!?編】






 次の日から私は速水ばかりを目で追うようになった。
 ずっと見ていてもサイボーグ速水は笑うことなどない。
 口角さえあげないのだ。
 笑った速水のことが夢の中の出来事かと思うほどだった。
 気にしても仕方ないのに、私は相変わらず速水を視線で追う。
「はぁ〜」
 この頃、溜息も多くなったように思える。
 そんな時間が過ぎて、速水がまた残業せずに帰って行く。
 病院へ行く気だ――
 私はそう思ってまたもや後を追って行ってしまった。
 だけど速水は寄り道をして店で花などを買おうとしている。
 病室にいる人への?
 サイボーグ速水が花なんて――
 それを貰う相手はどんな人なのだろうと私は気になりはじめた。
 もしかして母親?
 じゃあ、他校の男子生徒は速水の弟だったりして。
 そう思うと繋がりが上手く見えるような気がした。
 私はいけないことだと思い、速水が病室へつく前にその相手を確認しようと思い立った.
 もし母親なら丸め込んで、仲良くなるのも良い。
 献身的な姿を見せて、気に入ってもらえば速水も見直すかも。
 私は浮き浮きとして速水が来る前に病院へ向かった。
 どきどきしながら私は病室のドアのノックする。
 だけど返事は返って来ずに私は耳が遠いのかと思ってそうっとドアを開けた。
 だけど部屋の中はうす暗くて何だか寂しげな感じだ。
 私は恐る恐る、カーテンの向こうにいる人物を確認しようと歩いていった。
 そしてカーテンをゆっくりと引いて――
「――え」
 そこにいたのは、とてもとても綺麗な少女で、ぴくりとも動かない様は人形のように見えて驚いてしまう。
「人形……じゃないよね?」
 少女は寝ている? いや……意識がないように見える。
 たくさんのチューブが繋がれて、心音を映し出す機械が無情な音を規則的に出していた。
 ぴっ、ぴっと静寂な病室に響く、心音の機械――。
「この子……もしかして……」
 ずっと意識がないのでは?
 年齢が十六、七歳程度に見える少女は一体何者なのだろう。
 私は自分の想像とははるかに違っていて、戸惑いを覚えた。
――もしかして母親ではなく……妹?
 顔は速水に似ていないが、少女の血の通っていない美しさは似ている気がした。
「何を、している」
 低音のボイスが背中に届いてきて、私はびくんと肩を跳ねさせた。
 速水のことをつい忘れていて、この少女をしげしげと観察していたのだ。
「人のプライベートにまで首を突っ込んで、随分と暇な女だ」
 振り返って見た速水は不快そうに眉をひそめ、怒りを全身に滾らせていた。
 はじめて見る、速水の怒りの感情。
 それがあまりにも激しい炎で、私は身体が焼かれそうな錯覚に陥る。
「ご、ごめんなさい」
 私は触れてはいけないところに触れてしまったのだと思い、弁明の言葉が出てこなかった。
――怖い……
 ただそれしか思うことが出来ず、緊張で体が固まってしまう。
「用事がないならもう出て行ってくれ」
 速水から拒絶の言葉を吐かれて、私は何も言うことが出来ずに足早に去ってしまった。
 私は初めて後悔した。
 自分の浅はかな気持ちだけで速水の深淵を覗いてしまったことに。
 それだけでなく、速水があの少女に対しては深い愛情を持っていることが分かり悲しくなった。
 本当に心を開いた者にしか速水は感情を露にしない。
 他校の男子生徒に笑いかけたように、あの少女の為に怒りを見せたように――速水は大事に思っている人にしか本当の自分を見せない。
 私ではその中に入ることが出来ない。
 そう思うと、ずきりと胸に痛みが走った。
 彼はサイボーグでも何でもなかった。
 血の通う温かい人間で、それもきっと激しい感情を持つ人。
「私……馬鹿みたい……」
 いつも異性を容姿だけで見て、自分のモノにしてきた。
 表面上しか見ることが出来なかった安っぽい私は、同じように上辺に興味を持つ男しか寄ってこない。
 本当に人の本質を見ないでいた代償なのだとその時、はじめて気がついた。
「もっと……速水のことが知りたい……」
 上辺だけでなく、速水の置かれている環境や状況を知りたい。
 速水が何を思い、何を考えて毎日を過ごしているのかが知りたい。
 私は速水が大事そうに想うあの少女に激しい嫉妬を覚えた。
 私、嫌われもいい――って、もう嫌われているか
 私は嫌われたと確信したが、速水に近づきたい為に玉砕覚悟でアタックすることを決めた。
「私もお見舞いに行きたい」
 そう申し出たけど速水には無視されてしまう始末。
 ぐさっときたけど、私は諦めない。
 病院の前で速水を待ち、後を追いかけて話しかける。
 男に追われる側の私が、今度は男を追う側になってしまった。











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36      side4−2   エゴイストな彼  

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