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エゴイストな夜 side4ー1 【綾子と速水の大人な恋!?編】






 私、沢北綾子は容姿端麗、姉御肌、男好き、酒好き、頭も良し、あ、もちろん胸も大きいし、スタイル抜群でその上、家はお金持ち。
 はっきり言うが、非の打ち所は何一つない完璧な女である。
 帰国子女で、英語もぺらぺら。
 父が寄付している学校の英語教師になることになり、私はそこで速水秀一に出会った。
 ぱりっとしたスーツにお洒落な眼鏡、尖った革靴、高級な時計。
 教師というより――モデルみたいな彼。
 すらっとした手足に眼鏡の奥に光る切れ長の瞳、すっと伸びた鼻。
 そして吸いつきたくなるような、肉感的なエロい唇。
 肉食の私はもちろん彼にアピールすることを決めて、速攻で落とそうと思っていた。
 そして、私の取り巻きの一人に仕立てようと――忍び笑いをした。
 だが……こいつ……女に興味がないわけ?
 とにかく速水はモテる。
 まぁ、このようなしがない高校に速水のような男がいれば女子からは大人気だろう。
 だけど私達は教師の為に、生徒に手出しが出来るはずもない。
 私もガキには興味がない。
 やはり大人の色気を醸し出した上等な男が好みで。
 速水にアタックしているのは、同じ高校の女性教諭が多く、酒を飲みに行った店でもみんなが隣りの席を取り合っている。
 それなのに速水は顔色一つ変えず、それを冷たい瞳で見つめているだけだった。
 取り澄ましちゃって……何様?
 少しぐらい愛想笑いしたらいいのに。
 速水を誘おうともつけいる隙がなくて、取りつく島など全くもってなかった。
 様子を見ていても、くすりとも笑わず表情を崩すことがない。
 サイボーグ?
 そう思えば思うほど、速水がサイボーグに見えてきてしまう。
 どこか冷たい美しさを湛えた速水は、血の通っている人間には見えなくて。
 女性教諭達は、その冷たさがいいとはしゃいでいた。
 まぁ、確かに誰にでも愛想を振りまく男よりはいいかもしれないが。
 私はもっと人間的な感情を持った男が好きだった。
 綾子、僕だけを見て――などと感情を昂らせて言ってくれるような。
 速水がそのような言葉を吐くとは思えず、彼のことは止めようかと思った。
 それでもいつも何を考えているのか気になってしまう。
 サイボーグ速水は教え方も完璧で、受け持っているクラスの数学の成績は抜群だ。
 校長の信頼も厚いし、このまま間違いなく出世する有望株でもある。
 それに――
 風を受けてさらりとなびく髪は艷やかで、そこに手を挿しこんで抱かれたら――
 などと妄想してしまい、下肢がじんと熱くなってくる。
 やっぱりそのぐらい速水はいい男で。
 はぁ、本当に速水の容姿は好みなんだけどなぁ。
 ああ、ヤリタイ――。
 最近、欲求不満だし……自慰でも……いや、取り巻きの一人でも呼んで……
 私がそんなことを考えていたら、タイミングよく取り巻きの一人からメールが入る。
 おいしいイタ飯屋さんに行きましょう――などと。
 こいつ、どんな顔だっけ?
 綾子は取り巻きの一人を思い浮かべるが、ぼんやりと顔が霞んで思い出せない。
 メールを返そうかと思ったら、速水が珍しく残業もしないで帰ろうとする。
 もしかして、チャンス?
 私は速水の後を追いかけて廊下を歩いている彼に声をかけた。
「あの、速水先生。私も今日はこれであがろうと思っているんだけど、一緒に御飯とか――」
「済まない、これから予定があるので」
 はぁ?
 私が全部言い切らないうちに速水は断ってきて、さっさと廊下を歩いて行ってしまった。
 私は激しい怒りを感じて、やけ酒を飲みに行くことに決定した。
「あんな、サイボーグ男はもう知らないっ!」
 私は取り巻きの一人とイタ飯屋に来て、ワインをがぶ飲みする。
 だけど、悲しいかな。
 酒が強い私はどれだけ飲んでも酔っ払うことがない。
「綾子さんには僕がいるじゃない」
 取り巻き男がにやけながらそう言ってくるが、どうせこの後にえっちをしたいという下心が丸見えで気持ち悪く見えてくる。
 Hをするなら、私にも選ぶ権利がある。
 顔も覚えていないような取り巻きはやっぱり、それ程度の男で。
 イタ飯を食べてさっさと帰ろうと思い、ワインを一気に煽った。
「私、明日が早いから帰る」
 高慢に言い捨て私はお会計もせずにさっさと店を出た。
 あの男の連絡先はもう削除しよう。
 それほど取り巻き男はつまらない奴だった。
 まぁ、当たり前か――それ程度の男なのだから
 私はまだ苛立ちを感じながら、喧騒漂う街の中を当てもなくぶらぶらと歩いていた。
「あぁ、それにしても苛々する」
 男に振られたことなどない私は速水を思い出すたびにむかむかする。
「済まない、予定があるので……じゃないわよ。お高く止まるなっての」
 速水を意識から排除しようとするのに、どうしても彼のことを思い浮かべてしまう。
「もう一軒行こうかしら」
 私は飲みなおそうと考えて、ふらふらと道を彷徨う。
 だけどその時、私の嗅覚――いや動体視力が速水を捉えた。
「あれ、速水?」
 私はいつの間にか木々の豊かな病院の前に来ていて、そこに速水がいることを知る。
 玄関前で何人かの男女と話し合う姿を確認して目を瞬かせてしまう。
「予定って……病院?」
 もしかして速水が病気かと思い、心配してしまった。
「いや、いや、なんで私が速水の心配なんか。大体、サイボーグだし病気なんかするわけないじゃん」
 速水と話しをしていた男女達はぞろぞろとこちらに歩いて向かってくる。
――親戚の集まりかなにか?
 そう思うがすぐに意識は速水へと向いた。
 速水だけは病院の中へ入って行って、私は興味に駆られて後を追ってしまった。
 彼の弱みを掴めば、私の言いなりになるかもしれない。
 速水には散々プライドを傷つけられたから、下僕にしてやる。
 私はいけ好かない速水を奴隷にする算段を企てて、静まり返った病院内を歩いた。
「随分と……寂しい感じね」
 やたらうす暗い廊下は静寂に満ちていて、私のヒールがこつこつと鳴り響く。
「あ、やば」    
 廊下を曲がると速水が誰かと話しをしているのが目に入った。
 私はそっと覗いて様子を窺う。
 制服を着た高校生ぐらいの男の子と速水は話しをしている。
 うちの制服ではないわね――
 他校の生徒に何の用事だと私は不思議がってしまう。
 男の子はこちらに背を向けているので表情は分からないが、ときおり病室に顔をねじり速水と話しをしていた。
――病室に誰かがいる? こんな暗い場所に?
 ここだけ特別な病室な気がして、私は何だか見てはいけないものを見ている気持ちになった。
 帰ろうかと思った時に、私ははっと目を見開いてしまう。
 速水が笑ったのだ――。
 男の子と話しをしている速水が、表情を崩して優しく微笑んでいる。
 男の子の肩に手を乗せて何かを語っているようだが、私はその内容よりも速水が笑っていることが信じられなくて。
 嘘でしょう――あのサイボーグ速水が……
 その笑顔はとても綺麗な微笑みだけど、なぜか泣いているように見えた。
 どくっと血が脈動し――私はどきどきと胸が高鳴りはじめる。
 なに、これ?
 なんで私……こんなに胸がどきどきしているの?
 サイボーグ速水が笑っただけで、私の気持ちはかっさらわれていく。
 速水が男の子と話し終えて、二人で病室へ入っていった。
 私はそっと病室の前に立つが、そこには名札がかけられていなかった。
 この中には何が?
 私は気になったが、さすがに病室に入るわけにはいかない。
 速水に気づかれないように私は病院を立ち去ったのだった。










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