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エゴイストな夜 side3ー6 【後日編】
ワインをいただく桜を横目に見ながら、僕は落ち着き無くジュースをぐびぐびと飲む。 僕は綾子さんに思い切り飲まされて、意識を失ってしまうという醜態を晒してしまったが、桜はどうなんだろう。
速水さんも綾子さんもお酒は強そうだが、桜も強いとは限らない。
僕の心配もよそに桜のワイングラスはどんどんとなくなっていく。
適当な話をして、食事をしていると――
僕の足に何かが当たって、びくりと大袈裟に肩を跳ねさせてしまう。
それはさわさわと僕の腿を掠め、つま先をぐりぐりと擦られた。
これって――もしかして綾子さんの脚が、僕の足を撫でてる?
ちらっと視線を送るが、綾子さんは何も知らない振りをしてワインを飲んでいた。
勘弁してよ――隣りに桜がいるのにそんなことがばれたら、今度こそ縁を切られてしまいそうだ。
今だって、この間の綾子さんとの抱きつきシーンの弁解をしていない為に溝が出来ているのに。
僕はそっと足を引っ込めたが、綾子さんの長い脚が追ってきて腿を撫であげる。
ああ、脚の長い女性の正面には今度から座らないでおこう――などと意味が分からないことを考えた。
テーブルの下で繰り広げられる必死の攻防に僕は全く気が抜けなくて、食事など二の次である。
なのに綾子さんはワインを飲み、速水さんと楽しくおしゃべりをしていた。
大人の女性は恐ろしい――僕はそんなことを思いながらどうしようかと考える。
トイレに行くと言って席を立とうと思ったが、綾子さんがついてきそうだ。
桜の家で迫られるなんてとんでもないと考えその案は止める。
どうしよう、どうしよう――
僕は困ったと思いながら、頭を悩ませていたところ――
さわっと、僕の内腿に手が伸びてきて下肢の中心をなぞる感触に心臓が跳ねた。
一瞬綾子さんの脚がそこまで到達したのかと驚くが、下肢を撫でているのは白い手で――。
――えぇ?
僕は自分の下肢を撫でる手が隣りに座る桜のものだと気がつき、視線を巡らせてしまう。
桜もこちらを向いていて、白い顔をピンク色に染めながら僕をじっと見つめていた。
はい? もしかして酔ってる?
僕が桜を観察していると、とうとう綾子さんの長い脚がぐんっと伸びてきて下肢をぐりぐりとまさぐった。
「うっ――」
その衝撃に背中をのけぞらせると、下肢に伸びていた桜の手がむんずと綾子さんの脚を掴む。
「綾子さん、そういう遊びはもう止めて下さい!」
「さ、桜?」
桜らしからぬ大声がリビングに響いて、綾子さんの脚の動きがぴたりと止まった。
「あら、ばれちゃった」
綾子さんがべろっと舌を出して、お茶目にそう言うが桜はぴりぴりと怒りを滲ませている。
酔っているから?
桜がそんなに怒る姿を見たことがない僕は驚いて何も言えない。
「でも桜ちゃん、私達は結講深い仲なのよ」
綾子さんが意地悪く笑い、携帯電話を取り出して操作する。
ま、まさかあの写真を見せようとするのでは――
僕は焦って立ち上がり、携帯を奪おうとしたところ――桜が先にかっさらい、映像を見つめた。
や、やばい――
写真を見つめていた桜は眉をしかめて、何をするかと思えば、指先を洗うためのフィンガーボウルに携帯を放り込んだ。
「さ、桜……」
防水機能がついていないようで、画面が水の中で真っ暗になっていく。
僕はそれを見て呆然としてしまった。
「ちょ、ちょっと、桜ちゃん! それはないんじゃない!」
綾子さんが激昂して、すぐに携帯を取り出して慌てて水を拭う。
「綾子さんこそ、いい加減にして下さい! 学校が休みなんて嘘をついて遊びがすぎます!」
学校の休みが嘘?
「あ、あの日の……」
僕が自転車で学校に迎えに行って、綾子さんに会った日――。
酔っ払い……ホテルで目覚めた時のこと。
「正樹君も、正樹君よ、そんな嘘に騙されて!」
桜の怒りの矛先がこっちに向いてきて、僕は困惑してしまう。
「ご、ごめん。桜――」
「何もなかったからいいじゃない」
綾子さんが髪を掻きあげて、残ったワインをくいっと飲み干した。
「え、何もなかったんですか?」
「当たり前でしょう、冗談なんだから。正樹君は酔っ払ってぐっすり寝ていたから。何も出来るわけないでしょ」
綾子さんの冗談があまりに性質が悪くて、僕は複雑になる。
僕がどれだけ悩んだことか。
「冗談でもしていいことと、悪いことがあるんですっ!」
桜は怒りが治まらないのか、つんとそっぽを向く綾子さんに大声で怒鳴った。
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