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エゴイストな僕 side1ー2



* * *



 次の日、僕は太陽の眩しさに盲目を焼かれて目を覚ます。
 そういえばカーテンが開けっ放しだったと思い、のろりと上体を起こした。
 だけど隣りにお姉ちゃんはいなくて、僕は脱ぎっぱなしだった服を着ると、家の中を探索した。
「お姉ちゃん?」
 声をかけながら家を探したけど、お姉ちゃんはどこにもいない。
 そんな矢先、玄関が開く音がして僕はお姉ちゃんが戻ってきたと思い、走って行った。
 だけどそこには知らないおばさんがいて、お互いが驚いた顔をしていた。
「僕は誰なの?」
「そういう……おばさんは?」
 もしお姉ちゃんの親戚だったら、怒られるかもしれない。
 僕は怖々とおばさんが誰であるか聞いた。
「おばさんはハウスキーパーよ。いつもより早く来ちゃったけど……で、僕は?」
 ハウスキーパーは家を掃除する人だ。
 このおばさんはお姉ちゃんの親族ではないらしい。
 それが分かり、ほっと胸を撫で下ろす。 
 だけど、おばさんが不思議そうに見てくるので僕はどうしようかと思ってしまった。
「えっと……お姉ちゃんの……」
 そこまで言ったが、それ以上の言葉が出て来なかった。
「ああ、桜ちゃんの親戚の子とか?」
 おばさんが言うので、お姉ちゃんの名前が桜というのを初めてそこで知った。
 桜――やっぱりお姉ちゃんは桜の木の妖精なのかもしれない。
 今だって忽然と姿を消してしまったのだから。
「病院に行かないの?」
 おばさんがそんなことを言うので、僕は首を傾げてしまう。
 病院って何だろう――意味も分からず何も言わずにいたらおばさんがまた喋ってくる。
「あら? 桜ちゃん、東野中央病院に入院しているんじゃないの?」
――入院?
 僕はその言葉に衝撃を覚えてしまい、家を飛び出して病院へ向かった。
 もしかしてお姉ちゃんは、僕が寝ている間に外に出て何か事件か、事故に遭ったのかもしれない。
 だけど僕を待ち構えていたのはそれよりも衝撃なことで――。
 東野中央病院の一室に、お姉ちゃんはいた。
 僕と旅をしていた時と、昨日交わった時と同じままの姿で、ベッドに寝ている。
 だけど、お姉ちゃんにはたくさんのチューブが繋がれてあって、昨日、今日、入院したようには見えなかった。
 親切な看護師さんに聞いてみると、お姉ちゃんは二年前からあの状態というのだ。
 二年前――? 
 僕は一瞬だけ、ふらりと立ちくらみがしてしまう。
 お姉ちゃんは二年前に両親と出かけていた時、車の事故に遭って、そこから意識がないというのだ。
 ただ生命が機能しているだけで、ずっと寝たままの、意識のない人形。
 たくさんのチューブを繋いで生命を繋いでいるのだという。
「そ、んな――」
 僕はお姉ちゃんが桜の前で言っていたことを思い出した。
『死にたいと願うのに、人間のエゴだけで生命を維持されている――』
 やっぱりお姉ちゃんは自分のことを言っていたのだと思い、僕はその瞬間、何かがぷつんと切れた。
 馬鹿みたいに叫び、お姉ちゃんの生命維持をしているチューブを引き抜こうとした。
 だって、可哀想だったから。
 たくさんチューブを繋がれて、生命だけを維持されているなんて、信じられなかった。
 そこにお姉ちゃんの意思がないのに等しいのに。
 旅をしていた時のお姉ちゃんはとても嬉しそうで、昨日僕と交わった時はとても温かみがあって。
 それなのに目の前のお姉ちゃんは、冷たくて、寂しそうだった。
「お姉ちゃん。苦しいの? だったら僕が解放してあげる」
 喚きながら、チューブを引き抜くと、ピピピッと大きな音が出て、看護師や先生が飛んで来て、僕は押さえつけられた。
 ひ弱な僕は大人の力に敵うわけもなく、あっさりと取り押さえられて、お姉ちゃんはまたチューブで繋がれた。
「申し訳ありません。君、きちんと謝って」
 看護師さんに頭をぐっと抑えられて、僕は頭を下げた。
 目の前にはお姉ちゃんの親戚という人が来ていて、一連の騒動を聞いたらしく病院へ駆けつけていた。
「お姉ちゃんが可哀想だったから」
 僕がそう言うと、親戚は人は、人の良い笑みを浮かべて許してくれた。
 もっと怒られるかと思ったけど、あまりにもあっさりとしていて拍子抜けしてしまう。
 だけど僕はそのあとで、信じられないことを聞いてしまった。









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