先輩、僕の奴隷になってよ《番外編03》とある愛斗の劣情
番外編03《1》
*特別編 とある愛斗の劣情
愛斗は高校三年に進級し、退屈な授業を受けていて毎日が気鬱であった。
日本に飛び級というものがあれば、すぐにでも春香と同じ大学へ追いかけていくのに。
すでに高校三年生程度の勉学であれば、授業を受けなくても出来る。
雪哉にこの学校だけ飛び級制度を入れて欲しいと言ってみたが、あっさりと拒否されてしまった。
それはもちろん雪哉が愛斗に邪魔されることなく、大学生活を春香と過ごす為だということは分かっている。
大学は系列が同じなので、近い場所にはあったがなかなかと出向くことは出来ない。
高校とは違った時間帯で授業があるし、すれ違う日々であった。
その上、テニスサークルなどという軽薄な部に所属し、しょっちゅう新歓コンパやイベントが開かれ、やきもきとする毎日である。
それに最近は雪哉が春香の家に訪れ、家族孝行と名目をつけて夕飯を食べていたりする。
(本当に春香は分かっていない)
いかに外は狼だらけかということを知らない春香は隙だらけで、すぐにでもぱっくりと食われそうな危うさを持っている。
そんなある日、日直で遅くなった時に――
下級生から呼び出しを受けて、仕方なく裏庭へ足を運んだ。
天使の仮面を被っていた時は、ファンクラブがあって抜けがけの告白は許されておらず、ある意味愛斗は守られていた。
だが、春香と付き合うことを公言した途端、愛斗は豹変――いや元々の自分に戻り、ファンクラブを解散させてしまう。
近づきがたい雰囲気を持ち、氷のように冷たくなったと噂されたが、またそれも魅力的だと告白してくるものが後を絶たなかった。
これならファンクラブがあった方がましだと思ったが、煩わしい嘘の笑顔を浮かべるのも面倒臭いので、どっちもどっちだったが。
裏庭へ行くと名前も知らない下級生がもじもじとして、顔色を窺ってくる。
早く戻って、日誌を書き春香に連絡入れたいと気が急いていた時、ふと視線の端に男子生徒を捉えてしまった。
自然にそちらに振り向くと、ばちりと視線が合ってしまい、愛斗は不快げに表情を崩した。
弓平俊介――春香に好意を抱き、告白されるたびに相原先輩が好きなので、とわざわざ名前を出して断る一つ下の男子生徒。
それは愛斗が二年生の時に耳に届いてきて、どんな奴かを調べてみた。
可愛い顔をしていて、女子にも柔らかい態度で接するので人気があるようだ。
だが、春香の家にしょっちゅう自転車で来ていることを知り、わざと家の前でキスをした。
春香は鈍いから気がついていないようだったので、気付かさせないようにするのに必死だった。
あれだけいちゃいちゃとした様子を見せつけているのに、俊介は一向に諦める気配がない。
卒業式の時に春香に告白して、連絡先をポケットにねじり込んだ時は腸が煮えくりそうになった。
その上、ポストに手紙を直接送りつけてくる始末で、春香が気づく前に全て捨ててやった。
一連を思い出してむっとしていると、告白された俊介はまた春香の名前を出して断った。
もう春香はいないというのに、あれは愛斗への当てつけだと知り、尚更苛々が増す。
それを知っているのか、春香に脈があるという始末なのだ。
お前が勝手に連絡先をねじ込んだくせに、どの口が言っているんだと大声で言いたかったが、こちらはこちらで下級生に告白の答えを待たれて、つい冷たく言い放ってしまった。
泣き出しそうな顔をして下級生は立ち去ったけど、そんなことはどうでも良いことだった。
あいつは害になる、愛斗の直感がそう告げて警鐘が鳴り始める。
一年生の時とは違って、男らしくなり清廉な雰囲気をつけ始めた俊介は、もう可愛いだけの男子ではない。
春香の身辺に気をつけなければと愛斗は気を引き締めたのだった。
こんなことなら、ずっと手錠をかけて置くべきだったと後悔する。
そんな気も知らず春香は新歓コンパで、酒を飲まされたらしく――愛斗はすぐにでも駆けつけたかったがその日は養父の誕生日で食事をしていた為に席を外せなかった。
仕方なく雪哉に世話を任せたが、いつ手を出すか分からずにその日はずっとやきもきとしていた。
(早く夏休みになって欲しい……また手錠をかけられるのに)
愛斗がそんなことを考えているとは露知らず、春香は能天気にそれはそれは天真爛漫で毎日を過ごしている。
その純真さは愛斗が穢したところで変わらず、愛すべきところでもあったが、憎々しくもあった。
(やっぱり虐めたい)
春香が恥じらう顔や、困った顔を見るとぞくぞくと情欲が掻き立てられて、思い切り犯したくなるのだ。
潤んだ瞳で見上げる様は誘っているとしか思えないほど妖艶で、色香があることを本人は知らない。
乱れた春香は何とも言えぬほど、淫靡で扇情的で、それを思い出しただけでも下肢の中心が疼いた。
その顔を知っているのは愛斗だけで、永遠に誰にも見せる気などない。
早く春香に会って、たっぷりと可愛がりたい――そう男の欲望を滾らせて愛斗はくすりと笑った。
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