先輩、僕の奴隷になってよ《番外編02-1》とある弓平君の欲望

番外編02《1》


《番外編02-1》とある弓平君の欲望


 

 ***

「あの〜、相原ですけど」
 三日後、使用されていない教室をわざわざ掃除して、しかもこの大学に通う従兄弟にお金を渡して裏工作をしていた俊介は春香が来るのを待ち望んでいた。
 今日来る有名な美術講師の弟子という名目で、従兄弟から伝言をしてもらい春香をまんまと呼びつけたのだ。
 もちろん、本物の美術講師の男のモデルなぞさせたくもなく、先に俊介が手を打って、春香の先約を取り付けた。
「あ、入ってくれるかな。鍵を閉めて、それと暗幕カーテンもね」
 このような喋り方でいいかなとどきどきしながら、目がいいというのに伊達眼鏡をくいっと上げて、振り返る。
 純粋な春香は素直に言うことを聞いて、鍵を閉めて暗幕カーテンを隙間なく引いて、外からの目を遮断させた。
 ここからは俊介と春香だけの時間だと思うと、妙に緊張感が増してくる。
「えっと、あの〜、弓原さんですか?」
 もしかして覚えてくれているかもと期待して、本名を名乗って見たが春香は全くもって忘れている様子だった。
 それが逆に俊介のプライドを刺激し、もう遠慮はしないと思わせる。
「ええ、僕が弓原です。バイト料を出すので一日付き合ってもらえるかな?」
 春香がじっと見てくるので、素性がばれたと思い、どきどきと胸が高鳴った。
「お弟子さん、随分お若いんですね。もっと上なのかと」
 どうやら俊介の年齢のことが気になっているらしく、ほっと胸を撫で下ろす。
「あ、はは。童顔ってよく言われます……いや童顔でね。これでも結講年齢は上なんだよ」
 できるだけ堂々と言わなければばれてしまうと思い、俊介は苦笑いを浮かべながらそう言った。
「あ、そうなんですね。失礼しました」
 申し訳なさそうに言う春香を騙しているのがちょっぴり悪く思うが、それでも俊介の欲望の方がそれを上回る。
(春香先輩、可愛い、信じちゃってる)
 そこが春香の愛らしいところでもあり、同時に征服欲に駆られる部分でもあった。
(そんなに簡単に騙されて……僕が何を考えているか……先輩は男ってものが分かっていない)
 俊介は眼鏡の奥からじっと春香を観察し、どうしてやろうかと内心ほくそ笑んだ。
 取りあえず、春香を描きたいというのは本音で無難に椅子に座らせる。
 花が似合うと思ったので、大きな花瓶に花を生けて真ん中に春香を持ってきて、構図を決め始めた。
 初めは筆が進むのだが、なんだか上飾りな春香しか描けていない気がして、手が止まってしまう。
(何かが違うな)
 春香が堅くなって緊張しているのではと思い、休憩を取ることにした。
「これ、飲んでいいんですか?」
 テーブルに所狭しと並べられたジュースは従兄弟に調達してもらったものだ。
 俊介はどうぞ、と促して春香は適当にあったものを手に取って一気に飲み干した。
 緊張して喉が渇いていたんだなと俊介はぼんやりと思い、また絵を再開し始めた。  
 だが、変わり始めたのは数分経った時のこと。
 春香の緊張は解けてきて、肩の力が抜けているのは分かったが、それにしては先ほどとは打って変わった表情であり、俊介はまじまじと見てしまう。
 目はとろんと蕩けるようで、少しだけ脚を開いてぷっくりとした内腿が見えそうであり、男を誘うような半開きの唇の隙間からちろりと赤い舌が覗くのはどこか淫靡な情景だった。
(え、え、え?)
 いつも元気な春香から想像つかないほどの色香漂う表情に俊介は驚きを隠せないが、同時にどきどきと胸が高らかに鳴る。
ちらりとテーブルに視線を送り、春香が飲んだ缶ジュースを確認したら、何とアルコール入りであった。
 従兄弟は成人しているので、気にしないで買ってきたのだろうが春香が飲んでしまったのだ。
 だが、雰囲気からしてどうやら酔っているように見える。
(もしかして、お酒すっごく弱い?)
 なんだか頭をふらつかせて、一生懸命に椅子に座る姿は可愛くもあり、その一方で俊介の男の欲望を煽る光景でもあった。
 それと同時に脳が冴え渡り、絵を描く意欲もむらむらと湧き上がってくる。
 これこそが、俊介の追い求めていたもう一人の春香であり、そのエロティックな様子を描き残したかった。
(もっと、見たい。淫らな姿を)
 俊介は性的興奮を覚え、虚ろな目つきの春香に指示をする。
「あの、椅子はいいから、その、寝そべって」
 俊介が使用されていない白い布を取り出し、床に敷くと春香がこくりと頷いてゆっくりと腰を下ろした。
「じゃあ、えっと」
 眠そうにしている春香を刺激する為に、俊介は新らしい筆を手に持つと傍に寄って、同じように座り込んだ。
「もっと……扇情的な顔して下さい」
 つい癖で敬語を使ってしまうが、春香は思考能力が落ちているらしく、視線だけを向けてくる。
 不思議そうに首を傾げるのは、扇情的というのがどういうことか分からないようだった。
 確かに扇情的な顔と言われても大抵の人はどうしていいか迷うだろう。
「あ、やっぱりそのままでいいです。僕が引き出しますから」
 俊介は改めてそう言い直し、手に持っている筆でこしょこしょと春香の頬を撫でてみた。
 ぴくっと可愛い反応を示し、肩を竦めるのを見ると激しく情欲が煽られていく。
「春香先輩……」
 どきどきとしながら、そのまま筆で首筋、その下の浮き出た鎖骨に滑らせてみた。
「……ん」
 春香の唇から漏れた可愛い声を聞いて、どうしようもない劣情に駆られる。   
「春香先輩……今度は脱いでみましょう」
 もっと痴態が見たくなり、そう耳元で囁くと、甘い香りが鼻を掠め、今すぐにでも押し倒したくなった。
 それでも急くのはよくない――それにもう少し春香と戯れの時間を過ごしたいと考え、ぐっと我慢をする。
「え……」
 一瞬だけ春香が考え込むので、慌てて嘘を並べ説得してみた。
「これは芸術です、もしかしていやらしく考えていませんか? 誤解されないようにお願いしますが僕は最高の作品を作りたいんです。それにはどうしても女体を描く必要があるんです。協力お願いできますよね?」
 半ば無理やりなことを言ってしまったが、春香は鈍感なところがあるし、人を信じてしまう純粋さもある。
 これ以上に考え込まれないよう、俊介は春香の着ている桃色のカーディガンを脱がし、可愛いフリル付きのボタンを外していった。
「あ……」
 春香が抵抗を見せ、俊介の手を押しやるがアルコールが効いているようでふらりと態勢を崩し片手を床についた。
「ほら……大丈夫ですよ。僕が綺麗に描いてみせます」
 外れたブラウスの間から白い肌が見え、すでに理性が飛びそうである。
 緊張で震える手を意思の力で抑えつけ、ブラウスをするりと手首まで落としてゆっくりと取り除いていく。
 暗幕で塞いでいるため、室内はかなり暗いのだが春香の白い肌が眩しく輝いてごくりと喉を鳴らしてしまう。
「ス、スカートも脱ぎましょうね……」
 春香を白い布の上に優しく寝かせて、スカートもするりと剥ぎ取った。
 下着だけの姿を見ると、俊介はどきどきと鳴り止まぬ心臓の音が外に聞こえてしまうのではと視線を彷徨わせた。
 今更いけないことをしているのだと思うが、春香のほんのりピンク色に染まった肌や潤みを帯びた瞳を見るとそんな感覚さえも吹き飛んでいく。
 その上、想像もしないいやらしいショーツをつけていることにも興奮の熱が滾り、抑えが効かなくなった。
(春香先輩……そんな下着……)
 秘部を覆う小さな面積の布は、少しだけ透けており柔らかそうな茂みが目に入る。
 バックは臀部に食い込み、少しでも動いたら秘密の場所が見えそうであった。
 俊介はじっと食い入るように凝視し、すでにズボンを押し上げはちきれんばかりの雄を手で抑える。
「凄く……綺麗ですよ……ああ、夢にまで見た春香先輩の……」
 春香自体が甘い蜜を発しているようで、俊介は我も忘れふらふらと誘われるがまま座り込んだ。
 酒の甘い香りに俊介まで酔いそうになり、陶然とした面持ちで春香を見つめる。
「春香先輩……もっと綺麗になって下さい」
 俊介は自分の欲望を満たす為に、筆を持ち直すと春香の体に這わせていった。
「ん……くすぐったい……」
 うつろとした目つきが一瞬絡み合い、俊介はどぎまぎとしつつ筆を動かせる。
そのたびにぴくぴくと肢体を跳ねさせ、腰をくねらせる様に嗜虐心が煽られ、柔らかそうな肢体を舐め回したい衝動に駆られた。
 だがもっと春香を虐めたくなり、ブラによって押し上げられている柔肉を筆の先でくすぐる。
「あ……ん……」
 艶を帯びた甘い吐息が唇の隙間から漏れると同時に、赤く柔らかそうな舌がちろりと蠢いた。
「は、春香先輩……」
 ぞくぞくと情欲がそそられ、俊介はそろそろと顔を近づけてそっと唇を合わせる。
 生まれて初めてのキスは何とも言えないほど甘く、脳の芯が蕩けそうなものだった。
 一度だけでは足りずに、今度は思い切って開いた隙間から舌をねじ込み、口腔内で動かせてみる。
 すぐに春香の舌を見つけて、絡ませるとそれだけでびりびりと身体が痺れた。
 ぬるりと粘つく濡れた舌が官能的で、とてつもなく卑猥で――。
「ンっ……あっ……春香先輩っ……」
 気がつくと夢中になって春香の舌を舐めて、吸い上げ、絡め取り、欲望の赴くまま侵していた。
 なんて素敵なキスなんだと俊介はうっとりと瞳を細めて、春香の恥じらう表情を観察する。
 息が苦しいのか春香が顔を背けたので、すぐに顎を捉えて逃がさないようにし、舌を執拗に追いかけて舐め回した。

 




            
  

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