先輩、僕の奴隷になってよ hold-17

hold-17



***


 春香が学園に行こうとすると、入れ替わりに母の秋子が家に戻ってきた。
 夜勤明けで眠そうな顔をしながら、携帯電話に耳を押し充てている。
 いつから使用しているのか分からないほど、携帯電話はぼろぼろで壊れかけていた。
 実際、その携帯電話を使用しているのを見たことがなく、仕事用には新品のものを使っている。
 いつも何を聞いているの? と春香が問うと決まって秋子はお父さんからのメッセージと答える。
 どうやら父が生前に残したメッセージを繰り返し再生しては聞いているようだった。
 それを思うと不憫に思え、ますます事の真相を教えるのは避けたいと春香は考える。
「おはようございます、おばさま」 
 愛斗がしっかりとした挨拶をして、綺麗な仕草でお辞儀をする。
「まああ、礼儀正しいのね……」
 秋子が驚いたように口を開くが、一瞬だけ瞳に憂いを浮かべた。
(お母さん……?)
 まるで我が子を見るような視線を向けるが、すぐさまそれは打ち消され秋子はほんわかと笑う。
「行ってらっしゃい」
 秋子が玄関で春香と愛斗を見送り、にこにこと手を振った。
「はい、行ってきます」
 愛斗がもう一度、お辞儀をした後でぐいっと手錠を強引に引っ張った。
「ま、愛斗君っ……」
 春香がよたついて、愛斗の隣りに並ぶとそっと手を繋いできた。
(――えっ)
 驚いて愛斗を見つめるが、平然とした顔でこちらを振り向く。
「手が寒いから……温めて」
 主人然とした言い方で春香に傲慢に言い放った。
「あ……そういうことね……」
 奴隷となった春香が自分の立場を思い出し、愛斗の手を優しく包み込む。
 愛斗がぴくりと肩を震わせ、白い頬に朱を差した。
(もしかして照れてる?)
 案外可愛いところもあるのだと思い、春香は一生懸命に手を温め続けた。
 学園につくまで手を握り締めていたら、気をよくしたのか愛斗はいつもよりご機嫌に見える。
 柔らかい微笑みを浮かべたその様は、本物の愛斗の笑顔を見た気がした。
愛斗は学園に行くと仮面を被り、愛想よくみんなの相手をする。
 教師から頼まれた花壇の水遣りさえも、快くオッケーするのだ。
(よくやるわ……)
 騙されていた自分が馬鹿だと思ったが、これは愛斗の演技力が凄いのだと改める。
 教師さえも見抜けない完璧な演技は拍手さえ送りたくなった。
「はい、先輩。水をかけてあげてね」
 庭の花壇前で愛斗はじょうろを春香に渡してきて、にっこりと微笑んだ。
「え、それって……愛斗君が受けた話で……」
 じろっと一睨みされて、ぐっと春香は押し黙り水遣りを開始する。
「そうそう、主人の言うことはちゃんと聞かなきゃね」
(この……二重人格……)
 声を大にして言いたかったが、そんなことをいえば倍になって返ってくるだろう。
 春香は我慢してせっせと水遣りをするのだった。
 それから愛斗になにかある事にこき使われ、教室に帰って来たときには、春香はぐったりとしてしまう。
「おいおい、春香ぁ〜調子でも悪いのか? 体育休めばどーよ?」
「あ……雪哉……」
 顔を覗き込んでくる雪哉はすでに体操服を着て、長い髪を一つに縛っている。
「何、男子はサッカー?」
「そうよ、俺の華麗なる足さばきを女子達に見せつけようと思ってさ」
 雪哉はサッカーの授業の時だけかなり本気モードで、髪を縛るからすぐに分かるのだ。
「先輩……顔色悪いですから……僕が保健室へ連れて行きますね。雪哉先輩、春香先輩は休むって言っておいて下さい」
 愛斗が可愛らしく言うと、雪哉はああ、と短くそれだけを答えた。
(いや……私が疲れているのはこき使われているから……)
 そんな視線が雪哉に伝わったのか、頭にぽんと手が乗せられる。
「そんな悲しそうな顔するな。いつでもサッカーを見せてやるから」
 雪哉はにかっと笑い、春香の頭をぐしゃりと撫でた。
(いや……違うから)
 とんだ勘違いだと思ったが、ぐいっと手錠を引っ張られ春香は雪哉から離れた。
「さぁ、先輩行きましょう――ね?」
 愛斗はにっこりと愛らしい微笑みを浮かべるが、瞳はまるっきり笑ってなどいなかった。
「じゃ、じゃあね、雪哉」
 何か怒らせてしまうことをしてしまったと思い、春香は頬を引きつらせて雪哉に別れを告げたのだった。
黙々と廊下を歩く愛斗の背中が怒りを帯びているように見えて、春香はだんまりとしてしまう。
 ただ手錠を力強く引っ張る愛斗の機嫌が悪いということだけは分かった。
 保健室に到着するが、保険医を丸め込み愛斗が春香の様子を見るという話になった。
(ああ、先生〜行かないで)
 保険医は一時間ほど休憩するといって、出て行ってしまう始末で。
 ぴしゃんとドアを閉めて、しっかり施錠する愛斗はくるりと振り返った。
 すぐさまベッドに押し倒され、愛斗は制服のリボンをしゅるっと外し、春香の胸を見つめる。
「ま、愛斗君?」
 恐る恐る顔を見上げると、じとっとした目つきを向けてきた。
「主人の許可なしに勝手に男と喋るなんて、いけない奴隷だね」
「え――?」
 雪哉と喋ったことが気に食わないようで、愛斗はぐっと胸を掴む。
「い、痛いよ……」
 顔を歪めるが、愛斗は不機嫌なまま胸を何度も揉み続けた。
「あいつに体触られて――本当、誰でもいいの?」
 愛斗が襟元を強引に割り、ブラを引きずり下ろした。
「あ、頭を触られただけで――」
 言い訳しようとしたら、愛斗が上体を起こしてかちゃかちゃとベルトを外す。
「分かっていないようだね、先輩」
 愛斗が下着からずるりと肉棒を引きずり出し、手錠を引っ張り上げた。
 春香の上体が起きたところに、いきり勃った肉棒を顔に押しつけられる。
「先輩は主人の言うことに忠実でなきゃね……あいつとどちらが雄として優っているか……教えてあげるよ」
 愛斗がぐいっと切っ先を春香の口に押し込めてくる。
「ンっ……ぐ」
 質量を増したモノが喉を突き、えずいてしまうが愛斗はゆっくりと腰を動かせた。
「ほら……先輩……昨日も教えたでしょう……気持ちよくして……」
 昨日抱かれた合間に愛斗のモノを扱き、舐め、勃たせることを覚えさせられた。 
 今日はまだ一度も放出していないので、愛斗のモノは元気に隆々とそびえ勃っている。  
 春香が舌を這わせたら、愛斗の顔が切なげに歪むのがたまらなく好きだった。
 この顔を見れるのは自分だけだと思えば、嗜虐的な劣情に駆られる。
「ンっ……ちゅっ……愛斗君っ……」
名前を呼んで舐めると愛斗が艶を帯びた吐息を漏らし、春香の髪に手を挿しこんでくる仕草も好きで。
「あっ……ぁ……春香……っ……」
 夢中になると愛斗が春香と呼び捨てにしてくれることも、嬉しくてたまらない。
 もっと、もっと、愛斗の素顔を知りたくて春香は口で何度も肉棒を扱きあげた。
「……春香……いいよ……とても……ぁ……っ……」
 腰を揺さぶる間隔が短くなり、口の中で膨張をし始める。
 陶然とした面持ちで見下ろしてくる愛斗の色気を帯びた顔が、とても淫らで扇情的で――。
 手で扱き、唇では怒張した切っ先をねっとりと舐めると愛斗は腰をぴくぴくと可愛く震わせた。
「春香……っ……上手だね……教えがいがあるよ……主人の種をたくさん……飲んで……味を覚えて……ンっ……ああっ……」  
 ぐっ――と質量が増し、春香の口の中を一杯にする肉棒は今にも破裂しそうなほどどくどくと脈打っていた。
(イクのね……愛斗君……いいよ……たくさん……きて……)
 愛斗の全てが欲しくなり、春香は口に含んで舌を這わせる。
「イク……ぁっ……春香っ……イクッ……」
 髪に挿し込まれた手が春香の頭を前後に揺さぶり、何度も喉の奥まで熱くたぎる肉棒を突き立てた。
「はぁ……あっ……飲んで……春香……全部残らず……イクっ……ぁっ……」
 腰を深く沈めた瞬間、口の中にどばっと液体が広がる。
 むせ返る雄の精がつんと鼻をつくが、春香はゆっくりと白濁したものを喉の奥に流し込んでいった。
「春香……僕の種を一滴残さず飲むんだよ……」
 ずるりと肉棒を引き抜き、愛斗はうっとりとした瞳を向けてくる。
 全部飲み干すと、愛斗は嬉しそうに微笑み、春香の髪を優しく撫でた。
 その瞬間が幸せで、春香は撫でられるまま目を細める。
「ああ……僕の春香……先輩をもっと穢したい……」
 愛斗は同じセリフをなんべんも吐いて、春香を優しく抱き締めた。   
 春香もそれに応えるべく、愛斗の背中に手を回して、このうす暗い幸せに浸るのであった。  
  









17





ぽちっと押して、応援してくだされば、励みになります。m(_ _)m


     next/ back

inserted by FC2 system