先輩、僕の奴隷になってよ hold-12
hold-12
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夕暮れに染まる図書室に春香は借りていた本を返しにきていた。
受験生が静かに座って勉強しているのを見て、春香は出された課題をしなければと思い至る。
家ではどうも気が散ってはかどらないし、すぐに休憩といって、愛斗とお茶を飲んで終わってしまいそうだった。
「あの〜、愛斗君。少しだけ課題をやっていっていいかな? レポート出さないと内申もやばいから」
「ええ、いいですよ。僕は全然。春香先輩が困る姿は見たくありません」
にっこりと笑い、嫌な顔一つしない愛斗は、天使のように心も美しい。
春香は顔を赤く染めると、手錠を繋いだまま隅の席へ腰を下ろした。
「僕も隣りで本でも読んでいますので、お気遣いなく」
愛斗は本を取り出し、左手でぱらぱらとめくり静かに読み始める。
夕日に染まる愛斗の顔に陰影が刻まれ、長いまつ毛が頬に翳りを落とした。
図書館の床に延びるシルエット一つ取っても芸術品のようで、春香はついその横顔に見惚れてしまう。
うっとりと見ていると、さわっと太腿を撫でる感触で我に返った。
手錠で繋がれている手は二人とも下に下ろしている。
愛斗が動き、体に触れてしまったのだと思ったが、確実に意思を持った動きが始まった。
愛斗の手のひらがゆっくりと太腿をなぞって、肌の感触を確かめていく。
(――え)
愛斗をちらりと盗み見するが、本人は何もないように本に視線を落としていた。
一瞬、違う人の手かと錯覚するぐらいその様は平然としていた。
何が起こっているか理解出来ずにいる春香を笑うように、愛斗の手がするりとスカートの中に入り込み、きわどい部分をなぞる。
「――っ!」
小さな悲鳴が漏れそうになり慌てて口をつぐむが、愛斗はお構いなしであった。
机の下で愛斗の手を押しとどめるが、ささやかな抵抗だとしる。
男の力に敵うわけもなく、春香の手は押しやられ愛斗の動きが再開した。
慌てて腿を閉じるが、隙間から手が潜り込み春香の秘部をそっと撫でる。
びくりと肩が跳ねて、唇の隙間から甘い吐息が漏れた。
「相原さん、レポート?」
こういう時に限って、春香の知り合いが声をかけてくる。
「え、ええ」
彼女も腕に本をたくさん抱えて、レポートを作成するようだ。
このまま相席でもされたらたまらないと考えていたら、愛斗の手が強引にストッキングを引きちぎった。
――びりっと音を発し、春香の顔は青ざめてしまう。
「やだ、何かストッキングが破れた音がしなかった? 私?」
春香に声をかけてきた女生徒は慌てて自分の脚に視線を持っていき、あちこち破れていないかを確認した。
その間も、愛斗の手は秘部の周りだけ破いたストッキングの中へ侵入し、下着の上から秘裂を何度もゆるゆると擦る。
「――ぁ……」
細い喘ぎ声が出てしまい、春香はみじろぎするが反対に脚を開く形になってしまい、ここぞとばかり愛斗の手が下着の隙間から侵入してくる。
(愛斗君……何を考えてるの?)
愛斗は相変わらず本に視線を落としているが、すらすらと左手で何かを書き込み、すっと春香に見せた。
『もう、濡れている』
その文字を見て春香はわなわなと体を震わせ、愛斗に視線を向ける。
愛斗はうっすらと口元に笑みを浮かべ、こちらに振り向いた。
(愛斗君……?)
その笑みは無垢な笑顔ではなく、愛斗は斜陽の中、怪しいほど毒の色香を滲ませていた。
(この人は……誰?)
愛斗に双子でもいるのだろうかと思うほど、彼は全く違う匂いを漂わせているが、しかしそれでいて人を魅了する美しさは何一つ変わってなどいなかった。
「な〜んだ、ストッキング破れてなかった〜」
女生徒が顔を上げ、良かったと安堵の笑みを浮かべた瞬間、愛斗の繊細な指が花びらを割り拡げずぷりと蜜壷に突き立てられた。
「は――ぁっ……」
一気に指を突き立てられ、春香の腰はびくんと跳ねあがり高い声が漏れる。
一瞬、生徒達の目が怪訝に向けられてきたが、春香は慌てて口を塞いだ。
「どうしたの、体調悪い? 顔が赤いよ」
女生徒が心配そうに顔を覗き込んでくるが、春香は慌てて首を横に振る。
「ううん、大丈夫。ありがとう心配してくれて」
愛斗の指が中に埋められたまま、関節がぐっと鋭角に曲がる。
(はぁ……ぁ……駄目……)
指が膣壁の中を探るような動きをし、何度も角度を変えてじっくりと蠢く。
「じゃあ、私はあっちに行くね」
女生徒が手を振り背中を向けた瞬間、愛斗の手の動きは止まり、ゆっくりと蜜壷から指が抜かれた。
「春香先輩……今日はレポート書けなさそうですね。帰りましょう」
春香がまだぼんやりとしていると、愛斗がさっと立ち上がりにこりと微笑む。
それはいつもの愛斗でさっきまで春香の秘部を弄んでいた彼ではなかった。
(夢でも見てた?)
呆然と見上げていると愛斗は、忍び笑いを漏らして指を夕日にかざす。
指を開くと粘りを帯びた透明な糸が引かれ、夕日によってきらきらと淫靡に光っていた。
(やだっ……)
春香が目を見開き慌てていると、愛斗は濡れた指を口に含み、粘ついた愛液をねっとりと舐めとった。
「……愛斗君」
それがあまりにも淫猥で、凄絶なほどの雄の色香を帯びていて――春香の秘部はじゅくりと熱い滴りをこぼした。
「どうしたんですか、先輩。さぁ行きましょう」
春香を立たせて愛斗は図書室を出て行く。
引っ張られるように歩く春香は愛斗の背中に問いかけた。
「愛斗君……あの、さっきのこと……ただのいたずらよね……?」
愛斗も健全な男であり、女性の体に対して興味を持つ年頃であろう。
いくら天使で汚れがないといっても、それは春香達が勝手に植え付けたイメージなのだから。
やはりそのぐらいのこと知っていて当然かもしれない。
だからただ触りたかった――
いたずら心だった――そう愛斗も思っているのだろうと春香は答えを待つ。
愛斗はぴたりと足を止め、じっと佇んだまま沈黙を保った。
哀愁を帯びた背中を見て、いいしれようのない不安が広がっていく。
「いたずら……そんな簡単なものじゃないんです。僕はもっと違うことを先輩に望んでいるんですよ」
ようやく口を開いた愛斗の声音はいつもと違って、低く発せられる。
「……望み……? それってどんなこと?」
緊張で喉が乾き、掠れた声しか出てこなかった。
愛斗はくるりと振り返り、春香をまっすぐに見つめてくる。
「――望みですか?」
愛斗は一度だけ瞼を伏せ何かを考えるようにしていたが、次には大きな瞳を上げて――
「先輩、僕の奴隷になってよ」
そう、はっきりと口が動き、夕日の中で、愛斗はこれ以上にないほど美しい笑みを浮かべた。
それは純真な天使というにはほど遠く、人を酔わせ、堕落させる悪魔的な微笑であった――
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