河畔に咲く鮮花  




 「この男は、秀樹だよ。組み敷かれて無理やり強姦されているのは、蘭おねーさんさ」
 ともは残酷な言葉を吐き、蘭にあの夜の出来事を思い出させた。
 花見があった夜――秀樹は蘭の部屋に忍び込み、腕を縛りつけ、口を布で塞ぎ、体を蹂躙した。
 その一部始終が、ともの持っている携帯電話から再生される。
 無理やりされているとは思い難い淫らな喘ぎが蘭の耳にこびりつく。
「僕がどういう気持ちでこれを録画していたか分かる? 悔しくて秀樹を殺そうかと思ったよ。でも、これがあれば蘭おねーさんは僕に逆らえないよね。それだけを糧に必死で我慢した。笑えるよねぇ」
 くっと口元を歪ませたともの瞳は一切笑ってはいなかった。
「これを雪に見せたい?」
 甘く囁くともの声には棘が含まれている。きっとこれだけで怒っているのではないだろう。
 その瞬間、蘭は押し倒されてともに組み敷かれた。
「ねぇ、あの人形みたいな貴族の男とも何回ヤッた?」
 ともの声音はますます低くなり、瞳は暗く翳る。
 知らずに体が震えて蘭は目を見開くことしかできない。ともは何もかもを見透かしている。
 秀樹のことだけではなく、公人との関係のことも。それで苛立っていたのだ。
 その苛立ちの理由が分かったとしても蘭には成す術がない。
「まだ、義鷹は手を出してみたいだね。あいつも、薄気味悪いぐらい蘭おねーさんに執着している。罪つくりだよ、ねぇ?」
 冷えた声が降ってきて、蘭は恐ろしさで顔をしかめた。
「でも許してあげる。これから毎日、ここに通って雪が戻るまで僕が可愛がってあげるから。あいつらよりもたくさん、蘭おねーさんに精を注ぎ込むからね」
 カッと稲妻が走ったと同時に一斉に電気が落ちる。停電になったが、ともは態勢を崩さない。
 稲光の中で、蘭は見る。ともの瞳からは光が失われていることを――。
「もう、逃れられないよ。蘭おねーさん」
 ともの目は笑っていないが、口元だけは蠱惑的に微笑みを漏らしていた。
 ゆっくりと這い寄ってきて、引っかかった餌をいたぶりながら食べる。
――まるで、蜘蛛のよう
 蜘蛛の巣に引っ掛かった憐れな蝶を思い出し、蘭は弱みを握られたともの腕から逃れられないと直感で悟った。
 きっともがいても、もがいても糸が絡まるばかりで余計がんじがらめになる。 
「言ったでしょう? 僕は惜しみなく君を奪うって」 
 花見の時からすでに糸は周到に張られていた。
 綺麗な顔が落ちてきて、ともの手が顎にしっかりとかかる。
――恐ろしく残虐で、綺麗な蜘蛛に食べられる……
 蘭は恐怖におののきながらも、一切の躊躇いもないともの顔を見上げた。
「蘭おねーさん……僕に全てを食べさせて……」
 甘い吐息が漏らされたかと思うと、ともが唇に吸いついてきた。
「んっ……んっ……」
 空気まで吸い取られそうに唇を塞がれて蘭は苦しく喘ぐ。
 角度を変えて何度も唇を貪られて、肉厚の舌が歯列を割り口腔内をなぞる。
「ああ、蘭おねーさん……」
 うっとりと瞳を潤ませてともの片手が襟元から滑り込んできた。
「もっと、もっと蘭おねーさんを感じたい」
 ともは乱暴に襟元を割り、帯を解いて蘭を裸にする。ショーツ姿だけになった蘭は抵抗も出来ずにともに身を委ねた。
「綺麗だ、あの頃よりますます輝きを増しているよ」
 うつろな瞳でともはそう零すと、自身の浴衣もバッと剥いだ。 
 青い稲光に映える、滑らかで染み一つない美しい肌。
 ほどよくのった筋肉は二年前のあの頃とは比べようがなく逞しい。
 少年から青年に変わる、さなぎから蝶へ変身する瑞々しくも艶やかなともを間近で見て蘭はつい見惚れてしまった。
「もっと僕を見ていいよ」
 蘭が見ていたことに気がついたともは艶美な微笑みを刻む。
「ふふ、かわいい」
 妖艶で毒を含ませたともは笑いながら、熱い舌でねっとりと蘭の耳を食んだ。
「うっ……んっ……」
 びくりと体が反応してしまい、目を細める。
「かわいいよ、蘭おねーさん。もっと感じて? 僕でイキ狂って」
 いつからそんな魅惑的で官能的な言葉を発するようになったのか。
 綺麗な顔で誘惑し、毒を含んだ甘い声音で脳を痺れさせる。
 狂う嵐のような夜も効果を相乗させる力があるのだろう。
 いつの間にかともの手にかかり、蘭は蜘蛛の巣に深く絡め取られる。
 快楽と堕落という闇の底へ、堕ちていく――。
「さぁ、もっと良くしてあげる」
 ともが悪魔のように囁き、蘭の胸を突起を捏ねくり回した。
「あっ……んっ……」
 緩急をつけられて摘まれると蘭の体は次第に熱くなっていく。
「もう、こりこりになっているよ。気持ちいい?」
 熱い息が胸にかかったかと思うと、粘りを含む舌に固く尖った蕾を舐め上げられた。執拗に舐められて、蘭の口から熱い喘ぎが漏れる。
「んっ……ちゅっ……おいしいよ、こりこりしてて、赤く充血している」
 舌先で転がされ、口に含んで吸われ、手では形が変わるくらい揉みしだかれて蘭は官能の渦に浸った。
「そう、なにも考えなくていいんだよ。ただ気持ち良くなればいいんだ」
 ともに甘く囁かれて蘭はうつろな頭で復唱する。
――身を投げて気持ち良くなればいい。それでいいの?
「ほら、ここもすでに熱くなっているよ。汗じゃないよね。こんなにも指に絡みついて粘つくんだもん」
 ともは興奮した声音で、指をショーツの真ん中に沈めた。くちゅりと淫靡な音を立てて、すんなりとともの指を飲み込む。
「あっ……んっ……」
 強い刺激が駆け巡り体がびくんと跳ねてしまう。その反応が楽しいのかともは意地悪く敏感な部分を執拗に擦りあげた。しかも緩やかな手つきの為に、物足りなく感じてしまう。
 わざと焦らされて思わず腰が浮き、おねだりするような形になってしまった。
「ショーツの上からじゃ我慢できない? 腰が動いていやらしいよ。これだけぬるぬるじゃ、張りついて気持ち悪いでしょう」
 ともは意地悪く笑い、ショーツを思い切り引き下げた。すでに熱くなって疼きを増している下肢はともの愛撫を待っている。
 ともが強引に太ももを割り広げ、繊細で長い指を秘部に差し込んできた。二枚の花びらを広げて、秘裂の間を音をたててわざとなぞる。
「ふふっ、凄い音だね。蘭おねーさん。こんな音をみんなに聞かせたの? 恥ずかしいね」
 そう言っては指で、激しく秘裂の間を上下に何度も擦りあげてきた。
 









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