河畔に咲く鮮花  

     
 
キスに溺れる夜

 蘭はいつもの通り、ともの怪我が治るまで彼の仕事の手伝いをしたり、ご飯を一緒に食べたりしていた。若いおかげか回復力のある彼の怪我も順調に治ってきていて、今はガーゼの上に包帯を巻いている程度だ。
 それはそれで喜ばしいことなのだが、一つだけ以前と変わったことがある。
 それは……。
 夜になれば、ともが蘭の私室に訪れるようになって一緒に寝るようになった。添い寝をしたことがあるし、少しでも疲れている彼の力になればと思っていた。
「蘭、今日もキスをしていい?」
 ベッドに入るやいなや、ともはいつもキスをせがんでくる。バスルームの一件以来、毎夜ともは蘭にキスをしてきた。当初は唇をやわらかく押し当てる程度だったのに、日にちが経つにつれ、多くを望まれる。
「んぅ……ふっ……」
 長く濃厚なキスをした後、粘ついた透明の糸が二人の唇の間に引かれた。それが間接照明の明かりに照らされ、なんとも言えぬ淫靡な雰囲気を醸し出す。
 だけどこれだけでは終わらないことを知っている。ともに買い与えられ、身につけていたネグリジェが熱によってじっとりと湿ってしまう。それほど甘く長いキスをしていたため、肌が火照っているのだ。
「少し汗をかいちゃってるね」
 ともに目ざとく見つけられ、汗に滲んだ額にキスを降らされる。それだけでとどまらず、こめかみ、瞼、鼻のてっぺん、頬にと順序よくキスを落とされていった。一回、一回の感覚が長くて蘭の肌を愉しむかのような口づけ。
 それをされると身体がじわりと熱を帯び、いつまでたっても汗が引かなかった。
「こっちも汗で濡れている」
 さらりとした彼の髪が頬を撫でたと同時に、蘭の首筋に唇が押し当てられる。蘭は身じろぎながら身体をずらした。それでもともの腕の中からは逃れることが出来ず、優しく身体を押さえられる。
「駄目だよ、逃げちゃ」
 くすり、と忍び笑いが漏らされると、その吐息が首にかかってくすぐったくなる。それを分かっていて、ともがふぅっと息を吹きかけてきた。
「とも君、くすぐったい」
「だって、反応が可愛いんだもの」
 ともが顔を上げて情欲に燃える瞳を向けてくると、ぞくりと身が震える。そんな欲する目で見られたら、くらくらと目眩がしてきた。それでももう少ししたら解放されるはずだ。
 くすぐったいのを我慢していたら、彼がいつもと違う行動に出た。
 再度首筋に顔を埋め唇で撫でていたかと思うと、べろりと舌が這わされる。
「えっ、あの、とも君……っ」
 ぬめりを帯びた感触に身を震わせ、おののいていると次には髪を掻き上げられ露わになった耳を食まれた。
「蘭、じっとしてて」
 耳にしっとりと艶を帯びた声が届くと同時に息を吹きかけられ、ぞくぞくと背筋が震える。また彼の戯れなのだろうかと思っていたら、長い舌が耳殻を丁寧になぞっていき、びくりと肩を跳ねさせた。
「とも君……だめ……」
 耳を手で隠すと、ともが上体を起こしてナイトテーブルに置いてあるティーカップを取る。
「あ、それ……」
「ごめん、喉が渇いててさ」
 蘭の飲みかけの紅茶を一口飲んだ後、再度口に含んで彼が覆いかぶさってくる。唇を塞がれたかと思うと、とろりとした蜂蜜の味が口腔に注ぎ込まれた。
「んぅ……」
 ごくりと嚥下すると、爽やかなフルーティな香りが鼻から抜けていく。この間、ともとショッピングに行った時に買ってくれた茶葉だ。蜂蜜を入れているから、あの時よりも甘ったるく感じる。それでも喉越しが良いし、これを飲むと気持ちがふわふわとした感覚になり、身体のこわばりが解けていく。
「蘭、美味しい?」
 ともが聞いてきながらも、舌を絡めてくる。彼の舌も蜂蜜で甘くて、ついこちらからも絡ませてしまう。
「ああ、嬉しいよ。もっと僕を欲して」
 熱っぽい瞳を潤ませながら、ともの顔がするりと滑り落ちた。肩口に顔を埋め、鎖骨の窪んだところを丁寧に舐めあげる。
「ほら、もう怖くないでしょ」
 くぐもった声が聞こえたが、頭がぼんやりと霞がかりその意味が分からなかった。ふわふわするだけでなく、身体も先ほどより熱を持って火照る。身じろぐとネグリジェが肌に触れて、その感覚だけでぞくぞくとした快感が募ってきた。
「そう。怖い記憶なんて消せばいいんだよ。気持ちいいっていう記憶に塗り替えてあげるから」
 ともはなにを言っているのだろう。怖い記憶……? 考えようとしても、ともの舌が肌に這わされるたび、官能を揺さぶられ思考が鈍る。
「ここ、汗をかいているね。吸ってあげる」
 鎖骨を舐めていた舌がネグリジェによって押し上げられた胸の柔肉へと移動した。
「あっ……」
 ともの官能めいた唇が肉を食むと、そこにきつく吸いつきキスの痕を散らした。一箇所だけにとどまらず、首筋やデコルテにまで自分のモノだという証のように赤い花を刻みつける。
「んっ……」
 ちりっとした痛みが走るが、その後にくる甘苦しい余韻に腰が揺らめいた。ちゅっ、ちゅっ、とリズミカルに落とされるキスの嵐。そのたびにじっとりと汗をかき、ネグリジェの布が肌を撫であげる。
「蘭、綺麗だよ……あの時よりもっと綺麗になって……」
 うっとりとした囁きが落とされ、キスが深いものになっていった。熱く濡れた舌が肌に吸いつくたび、淫靡な気配が強まり濃密さが増していく。
「ああ、ここも汗をかいているのかな」
 確信をもったともの唇がネグリジェの布をうっすらと突起させている、胸の蕾に舌が
這わされた。それだけで肌がざわめき、甘やかな電流が駆け走っていく。
「んっ、んっ……」
 肢体をくねらせ、高らかな声を出してしまう。恥ずかしくて口を閉じるが、ともが唇で頂きを挟み軽く扱いてくるとまた声が出そうになった。それでも我慢していたら、ともが薄く笑みをはいて、今度は舌でこりこりとしこった蕾を苛めてくる。
「はっ……ふっ……」
 思わず声を漏らしてしまい腿をすり合わせると、下着の奥から熱い滴りがじゅくりと染み出してきた。思考が鈍く閉ざされた中で、性感帯だけが異常なほど刺激され快感が煽られていく。
「可愛いよ。もっと僕の腕の中で乱れて」
 ネグリジェの布越しに硬く尖った頂きを舌で捏ねくり回され、ときには押し潰し、官能をひらめかせて、みだりな気持ちへと落とされる。ぬるついた舌で赤く艶めいた蕾を嬲られ、むしゃぶるように吸われ、唇に挟んで甘噛みされれば、下肢の奥が疼いて堪らなくなった。
「あっ……んっ……も……だめ……ぇ……」
 舐めあげられるたびに、布が蕾を擦りあげて快美感に支配される。いつしかそれが焦れったくなり、直に触れて欲しい欲求にとらわれた。それでもともは勿体ぶって、布越しにぷっくりと尖った先端を悪戯に弄ぶ。
「んっ……あっ……」
 もじもじと内腿を擦り合わせると、下肢の間がねちょりとした潤みを帯びていて、恥ずかしさから慌てて脚を硬く閉じた。
「こっちからも、汗の匂いがするね」
 胸の先端を貪っていたともが顔を離し、目を細めながら閉じられた脚の間に向けられる。ネグリジェの裾をそっと捲られ、薄い布だけで覆われた下半身が晒された。
「あ……あ……そこは……いや……」
 脚を必死で閉じるけど、いとも簡単に膝を割られてシルクの下着を見せる格好になって
しまう。
「ここも、汗で濡れているね」
 とものじっくりと見つめる視線だけで、羞恥心が煽られ顔が熱く火照った。
「お願い、見ないで……」
「どうして? 汗なら舐め取ってあげないと」
「そ、そんな……」
「あれ? もしかして汗じゃないっていうの? だったら、なに?」
 意地悪に目を細め、ともは蘭の反応を愉しんでいる。蘭が恥ずかしくてなにも言えなくなってしまうと、くすりと笑われた。
「じゃあ、確かめてみようか。これが汗かなんのか」
「え、だ、駄目……汚いよ……」
「蘭に汚いところなんてない。僕が綺麗だと思えば、排泄器官でも綺麗だよ」
 ともは微笑みを落とすと、優美な指で蘭の後孔をくすぐる。
「そ、そこは、だめ……っ」
 全身を使って暴れると「分かった」と漏らし、ともの指が離れていった。ほっとしたのもつかの間、彼は脚の間に顔を埋めて布越しに息を吸い込む。
「汗、なのかな? 随分といやらしい匂いがする」
「に、匂っちゃ嫌……」
 あまりの恥ずかしさに声がか細くなった。拒絶しているのに、そんなことお構いなしでともの唇が内腿に這わされる。ぬるついた舌が腿を行き来し、下肢の際どいところまでキスをしてくる。
「この染みているところにキスをしてもいいよね」
 ぽつり、とこぼされた囁きと共に蜜を溢れさせている中心に吸いつかれた。それはもはやキスと言わず、蜜を滴らせている果実にかぶりつき、ちゅうちゅうと貪りつくすような卑猥な動きだった。
「ひゃっ……あっ……やっ……」
 その感触におののいて身体をずりあげたが、シーツに滑り込ませたともの手が臀部をわし掴んできて動きを固定される。
「駄目だよ、逃げちゃ。もう二度と……」
 強い響きで窘められ、溢れる蜜を美味しそうに啜りあげてきた。嚥下するように蜜を飲むだけでは飽き足らず、今度はなまめかしく舌が動いて、布越しにぷっくらと膨らんだ肉芽を舐めあげる。
「ふふ、ここも物欲しそうにしてる」
 薄く笑うと、舌がいやらしく蠢いて肉芽をくにくにと弄んだ。
「あっ……やっ……」
 そこは最も敏感な部分で、下着越しと言っても快美な感覚を拾ってしまう。どうにか逃れようとしても、臀部をわし掴む彼の手が強くて身動き出来ない。
「だーめ、気持ちよくしてあげるんだから」
 悪戯めいた唇が肉芽に押し当てられ、挟んでくると軽く扱かれた。つま先から快楽が迫りあがってきて、ぶるぶると掴まれたままの臀部がいやらしくわななく。
「あっ……ふっ……だめぇ……っ……」
 反射的に脚を閉じようとするけど、片方の手が内腿に添えられ大きく広げられた。そのまま舌でえぐるように肉芽を捏ね回され、肉の弾力を確かめるように押し潰されると、身体が甘く痺れてしまう。
「あっ……あっ……」
 断続的に快感に浸った声が出てしまい、責められるそこがじんじんと熱を持って勃ち上がってきた。
「凄いね。下着越しでも大きく膨らんでいるのが分かる」
 ちゅく、と音を立てて薄い布越しに肉芽を吸われる。蜜はどんどんと溢れてきて、下着が肌にはりつき、つけている不快感に襲われた。
「とも君……もう……やめて……」
「どうして? こんなに濡れているのに」
 ともの指が嬉しそうに秘裂の間をなぞっていく。その時、ぬちゅりと卑猥な水音がしてかっと顔が赤らんだ。
「恥ずかしがらなくていいよ。僕たちは結婚するんだから。蘭のいいところ、たくさん気持ちよくしてあげる」
「で、でも……」
「大丈夫、全部僕に任せていいから」
 ふわりと花のような笑顔を浮かべながら、肉芽に卑猥に吸いついてくる。やわく、強く、緩急をつけて責め立てられ、唇で小刻みに肉芽を震わされた。
「はっ……あっ……んっ」
 妖しい感覚に身悶えし、肢体をなまめかしくくゆらせる。下着越しに愛撫されていると、いつしか焦れったい気持ちがせり上がり、直に舐めて欲しくなった。
 それなのにともは一環して下着の上からいたぶり、そのまま絶頂へと導こうとする。
「はっ……あっ……とも君……っ……」
 どうして直に触れてくれないのだろう。もんもんとした感情に支配されながら、それでも彼の執拗な愛撫に乱れていく。
「いいよ、イッて」
 迫ってくる波が分かったのだろうか。その言葉に解放感が増し、彼のいやらしく蠢く舌に意識が集中した。
 舌が卑猥に動いて勃ち上がった肉芽を捏ね回し、快楽へと煽り立てていく。下着の中で蜜を溢れ出す媚肉が開き、下着をしとどに濡らした。
「あっ……ふっ……だめ……」
 大きなうねりに堪えようとしたけど、すっかり充血してしこった肉芽をちゅうっと蜜ごと吸い上げられると――。
「ああっ……!」
 くすぶっていた熱が一気に放出され、つま先から甘やかな電流が全身に駆け巡っていく。媚肉がひくり、ひくりと淫らにひくつきながらも、絶頂の余韻に浸っていた。
「愛してる」
 愛撫が終わった後、ともがなまめかしく濡れた口角を舐め取り、情感をこめた言い方でそう囁いた。ぼんやりとした視界の中、ともが蘭の手首を取りそこにキスを落とす。
「愛してる、蘭」
 尊い者を見るような、誓いめいた口調でともは再度手首にキスをした。それに応える間もなく、心地良い睡魔に襲われて意識を手放した。









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