河畔に咲く鮮花  

第三章 三十三輪の花 1:アユリとの秘め事


  人魚の里の紅葉が散り始めて、赤い絨毯が地面に敷き詰められている。
 その情景が美しくて、目を奪われるものなのに、その紅葉を回収する仕事が蘭とアユリに課せられた。
 なんでも高級料亭にその紅葉を売るということをしているらしい。
 和食の彩りとして添えられる、上質な葉っぱ。
 とくに人魚の里の紅葉は色も深く鮮やかで、品としてとても良いのだという。
 色んな料亭と契約を結び、年収だけも何千万の設けというのだ。
 それには驚いて、真面目に紅葉を集めなければと蘭の気持ちも引き締まる。
 葉っぱが傷ついて使えないのは、天ぷらにして食えばいいと志紀は簡単に言っていたが。
 この作業はとてつもなく時間を有するものであった。
 朝から取りかかっていたが、いつの間にか日は暮れて、これ以上は進まなそうである。
 帰り支度をしようとした時に、アユリがどさりと紅葉の詰まった袋を乱雑に落とした。
「アユリ、乱暴に扱っちゃ駄目でしょ。商品なんだから」
 蘭が注意するが、アユリはそんなこともお構いなしで、こちらに寄って来る。
 なんだか息が荒いようで、顔も紅潮していた。
 様子がおかしいと見ていたら、アユリの体が蘭の数センチ手前で止まる。
「どうしたの、アユリ? 体調が悪いの?」
 間近に迫ったアユリの顔を眺めながら、手をゆっくりと額へ伸ばした。
 アユリの額は少しだけ熱いようだが、思ったよりも熱は高くない。
 それでもはぁはぁと苦しそうに息を吐き出すアユリを見て心配になってきた。
「アユリ、どこか悪いの?」
 そう問うて額に乗せた蘭の手は、アユリの手に寄って掴まれた。
「……蘭姉ちゃん、アノ日でしょ?」
 掴まれた手に力が込められて、蘭の手は真下に下ろされる。
 蘭は月経であることを射あてられて、カッと顔を赤らめた。アユリはスッと顔を近づけて、蘭の首筋に唇を落とした。
 犬のようにくんくんと臭いを嗅いでは、ぺろりと濡れた舌で蘭の首筋をなぞりあげる。
「あっ……ンッ」
 予想もしなかった刺激に蘭は思わず背中を跳ねさせた。
「……ねぇ、お願い。血を飲ませて……」
 なおも首筋を舐め上げるアユリの言葉に、ハッと目を見開く。
――もう、満月が近いのだ。
 最近はなかったのに、蘭から漏れる血の臭いを嗅いで、性的興奮に陥っている。
「で、でも……血を飲むって……」
――どこの? 
 そう問う前に、蘭はくるりと向きを変えられ、紅葉の木に体を押しつけられた。
アユリに腰を突き出した格好になり、蘭は慌てる。
「あっ……アユリ、急に驚くじゃない」
 木の幹に胸を押しつけられたまま、蘭は半身だけをねじった。
 だがアユリは興奮して暴走を止められないのか、蘭の腰をぐいっと自分の体に引き寄せた。
「ちょ、ちょっとアユリ……!」
 お尻をアユリに突きあげる格好になり、蘭は恥ずかしくて腿を閉じる。
 だが、アユリはすぐに太ももに足を差し込んで来ては、足を割り広げた。
「ねぇ……蘭姉ちゃん、お願い……そんなに血の臭いをぷんぷんさせて、気が狂いそうになるよ。助けて……。俺を救って」
 アユリが背中にのしかかり、蘭の耳元で低く囁く。
 一度、受け入れて裏切らないと言った蘭は、その要望を断ることが出来ない。
 アユリの病気がまた出てしまった。
 そう、それを救えるのは蘭だけ――
「……いいでしょ、ねぇ?」
 アユリは粘ついた舌でちゅくりと蘭の耳をねぶる。
「ンッ……!」
 背中がのけぞり、蘭の胸はもっと木の幹に押し付けられた。
「で……でもいいの? そんなところの血を飲むなんて」
 アユリは蘭の月経によって、排出される血を飲むと言っている。
 そのようなものを飲んでもいいのか。
 躊躇っている蘭の下半身に手がかかり、作業用に履いていたズボンを一気にずり下ろされた。
「あっ……!」
 足首まで落とされ、冷たい外気に晒された足はぶるりと震える。
「……蘭姉ちゃんのだったらいいよ……なんでも飲める」
 アユリが蘭の背中から体を離して、その場にうずくまった。
 膝をついて座ると、突きあげられた蘭の臀部に手を滑りこませて、一気に左右に割り広げる。
「ああっ……ンッ……アユリ、そんなに広げないで……」
 ぷるぷると腿がわななき、ゆっくりと顔をねじった。
 アユリは下着に鼻を押し付けてくんくんと嗅いで、荒い呼吸を繰り返す。 
「たまんないよ、この香り。蘭姉ちゃん、たくさん飲んであげるから。この下着も取っていいよね」
 躊躇する蘭の返答も聞かずに、アユリはお尻から下着をずり下ろして、ズボンと同じように足首まで落とした。
 たらりと蜜壺から赤い線がこぼれ落ちて、蘭の白い肌に彩りを添える。
「ああっ、もったいない……ンッ……ふっ……」
 アユリは蘭の腿に指を食い込ませながら、内側を滑る赤い血に吸いつく。
 濡れた舌を伸ばして、下から上へ腿をなぞるように、舐め上げた。
「ンっ……アユリっ……」
 寒い空気の中、アユリの生温かい舌に触れられて、ぞくりと背中が粟立つ。
 何度も粘りのある濡れた舌になぞり上げられ、知らずに蘭は腰を突きだしていた。
「いいよ……蘭姉ちゃん。足が広がって舐めやすくなった」
 アユリが興奮した声音で囁くと、舌はどんどんと中心にのぼってくる。
「――ね、蘭姉ちゃん……志紀には内緒だよ」
 アユリの熱い息遣いが、蘭の秘部にかかって、ぶるぶると体を震わせた。
「秘密にするってこと?」
「そうだよ、これは今だけ――俺と蘭姉ちゃんだけの秘め事」
 そう言われるとなんだか悪いことをしている気がして、きゅっと体がすぼまる。
「ふふっ……蘭姉ちゃん、何かいけないこと考えた? 今ね、ひくりって花びらが震えたよ」
 アユリの冷笑にかぁっと全身が火照ってしまう。
――恥ずかしい、そんなところをじっくり見られては
 恥辱に震えながらも、その反面奇妙な興奮に駆られた。
 はらり――紅葉が舞い散り、世界を幻想的に彩る。
 降りしきる紅い葉を見ながら、その淫靡な世界に酔いそうにもなった。
「ああ、たくさん垂れてきてるよ。すぐに飲んであげる。ンッ……じゅるるっ……じゅるるるっ……」
 アユリの熱い舌が秘裂の間にぬぷりと差し込まれ、すぐに蜜壺の奥の血を吸いあげる。
 激しく吸引されて、体の奥がきゅんとすぼまった。
「ひぃっ……ンッ……アユリ……吸いつきが強いっ……ンッ……」
 思わず腰を引くが、アユリの手ががしりと臀部を掴んで、逃してはくれない。
「駄目だよ……逃がさないから……ちゅっ……ンっ……」
 体をねじっても、すぐにアユリの舌が追いかけてきて、ねっとりと女陰全体を大きく吸い上げられた。
「アユリ……そんなの激しく吸っちゃ……ンっ……」
 ちゅうっと強く吸われて、淫靡な水音を響かせる。
 血を吸われているだけなのに、ちゅぱちゅぱと柔らかい唇で淫唇の全てを執拗に責められると、快楽が攻め上がってきた。
「ああっ……おいしいっ……蘭姉ちゃんの……甘くて少しだけ苦味がある……ちゅっ……じゅるるっ……」
 すでにアユリの口元は蘭の血で赤く染まり、それを丁寧に舌で絡め取っては、喉の奥に流し込む様は耽美に見える。
「アユリ……」
 静寂な中、聞こえてくるのは紅葉が舞う葉ずれの音と、ちゅくちゅくという淫靡な水音だけだった。
 ――ああ、駄目……溺れそう
 血を吸われて体が浮遊し、奇妙な感覚が胸に広がっていく。
 現実とはほど遠い世界のことのように思えて、倒錯的な痺れが全身を包んでいった。







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