河畔に咲く鮮花  





 「でも、蘭姉ちゃんのことばかり考えて。駄目だと思っては、蘭姉ちゃんの中に精を吐き出すことばかり。そんな気持ちが募って気が狂いそうになった……」
 アユリは苦しげに息を吐き出し、それでも罪を知って欲しいかのように続ける。
「しばらくは満月でも血を飲まずにいられたんだ。だから志紀も安心していたけど。でも、蘭姉ちゃんが来てから、どうしても欲しくなって。ある日、盗んでしまったんだよ。それが見つかって怒られて、もうしませんって約束したけど……」
 その言葉でふっと和葉に出会った満月の夜を思い出した。
 志紀と源太は和葉に会っていた時に、物音を聞いて『診療所の方からだ』と呟いた。
 あの時は隠れていたのが見つかったと思ったが、あれはアユリが診療所に忍び込み輸血パックを盗んでいたと知る。
「で、そこからまた我慢したけどさ……やっぱり抑えが効かなくなって……蘭姉ちゃんに見つかった日……志紀にも相談せずに血を勝手に盗んであんな行為に走ったんだ。マッキーには悪いけど、ずっと蘭姉ちゃんに咥えられているって想像してさ。死ぬほど興奮したよ」
 アユリはへへっと屈託なく笑って、蘭の体を愛しそうにぎゅっと抱き締める。
「あの後は志紀になんで相談しないんだって散々叱られて。自己嫌悪に陥った……でも、ごめん。我慢しきれなかった。こうやって、蘭姉ちゃんを弛緩させて卑怯な真似しちゃったよ……」
 アユリは自分の行動を後悔しているのか、しゅんと綺麗な顔を曇らせて項垂れた。
「ごめん……本当はこんなことをする気はなかったけど……見ちゃったんだ……蘭姉ちゃんが志紀とキスしているところ。あの瞬間、強い衝動に駆られて、先にモノにしたかったんだ」
 アユリに志紀とのキスシーンを見られたことを知って、カァと体が熱くなる。
「照れてる? 蘭姉ちゃんの体温が少しだけ上がったよ。でもね、志紀のこと好きでもいいよ。志紀のモノになってもいい。俺は俺で蘭姉ちゃんのこと好きだから。それに志紀のことも認めてるから。あいつなら、蘭姉ちゃんを幸せに出来るって思う。でも……」
 アユリは体を起こして、蘭を見下ろした。
 そして、ゆっくりと顔を近づけて唇を優しく重ねてくる。
 数秒だけ甘いキスをした後に、アユリは顔を離して悲しそうに微笑んだ。
「……もう少し、もう少しだけ俺の相手して? 志紀とヤッてもいいけど、もう少しだけ俺ともいて? 満月近くになるとまた衝動に駆られるかも知れない。その時は……ごめん……俺を今日み
 たいに救って?」
 アユリの大きな瞳にまた涙が浮かんでくる。
 それが、綺麗で悲しくて。
――この青い海の中で揺れている静かな波のように見えて。
 蘭はそれに酔いしれるように、こくりと静かに頷いてしまった。
「……蘭姉ちゃん、大好き」
 アユリはもう一度、蘭に優しいキスを落とす。そして、にこりと綺麗に微笑んで――
「ねぇ、もう一回シテもいい?」
 そう言って、蘭の体を優しく舐め始めた。
 それは情欲を滾らせた欲望ではなく、蘭を愛しみ大切にしてくれる愛情のこもった愛撫。
 それに魂を奪われ、蘭はもう一度アユリとこの綺麗な月の下で愛し合う。
 無音の世界はまるで、この世でアユリと蘭とのたった二人だけの夜のようで。
 全てを話してくれたアユリの心にようやく触れられて。
 蘭とアユリにとっては生涯、忘れ得ない一夜になった。 
「でも、蘭姉ちゃんのことばかり考えて。駄目だと思っては、蘭姉ちゃんの中に精を吐き出すことばかり。そんな気持ちが募って気が狂いそうになった……」
 アユリは苦しげに息を吐き出し、それでも罪を知って欲しいかのように続ける。
「しばらくは満月でも血を飲まずにいられたんだ。だから志紀も安心していたけど。でも、蘭姉ちゃんが来てから、どうしても欲しくなって。ある日、盗んでしまったんだよ。それが見つかって怒られて、もうしませんって約束したけど……」
 その言葉でふっと和葉に出会った満月の夜を思い出した。
 志紀と源太は和葉に会っていた時に、物音を聞いて『診療所の方からだ』と呟いた。
 あの時は隠れていたのが見つかったと思ったが、あれはアユリが診療所に忍び込み輸血パックを盗んでいたと知る。
「で、そこからまた我慢したけどさ……やっぱり抑えが効かなくなって……蘭姉ちゃんに見つかった日……志紀にも相談せずに血を勝手に盗んであんな行為に走ったんだ。マッキーには悪いけど、ずっと蘭姉ちゃんに咥えられているって想像してさ。死ぬほど興奮したよ」
 アユリはへへっと屈託なく笑って、蘭の体を愛しそうにぎゅっと抱き締める。
「あの後は志紀になんで相談しないんだって散々叱られて。自己嫌悪に陥った……でも、ごめん。我慢しきれなかった。こうやって、蘭姉ちゃんを弛緩させて卑怯な真似しちゃったよ……」
 アユリは自分の行動を後悔しているのか、しゅんと綺麗な顔を曇らせて項垂れた。
「ごめん……本当はこんなことをする気はなかったけど……見ちゃったんだ……蘭姉ちゃんが志紀とキスしているところ。あの瞬間、強い衝動に駆られて、先にモノにしたかったんだ」
 アユリに志紀とのキスシーンを見られたことを知って、カァと体が熱くなる。
「照れてる? 蘭姉ちゃんの体温が少しだけ上がったよ。でもね、志紀のこと好きでもいいよ。志紀のモノになってもいい。俺は俺で蘭姉ちゃんのこと好きだから。それに志紀のことも認めてるから。あいつなら、蘭姉ちゃんを幸せに出来るって思う。でも……」
 アユリは体を起こして、蘭を見下ろした。
 そして、ゆっくりと顔を近づけて唇を優しく重ねてくる。
 数秒だけ甘いキスをした後に、アユリは顔を離して悲しそうに微笑んだ。
「……もう少し、もう少しだけ俺の相手して? 志紀とヤッてもいいけど、もう少しだけ俺ともいて? 満月近くになるとまた衝動に駆られるかも知れない。その時は……ごめん……俺を今日み
 たいに救って?」
 アユリの大きな瞳にまた涙が浮かんでくる。
 それが、綺麗で悲しくて。
――この青い海の中で揺れている静かな波のように見えて。
 蘭はそれに酔いしれるように、こくりと静かに頷いてしまった。
「……蘭姉ちゃん、大好き」
 アユリはもう一度、蘭に優しいキスを落とす。そして、にこりと綺麗に微笑んで――
「ねぇ、もう一回シテもいい?」
 そう言って、蘭の体を優しく舐め始めた。
 それは情欲を滾らせた欲望ではなく、蘭を愛しみ大切にしてくれる愛情のこもった愛撫。
 それに魂を奪われ、蘭はもう一度アユリとこの綺麗な月の下で愛し合う。
 無音の世界はまるで、この世でアユリと蘭とのたった二人だけの夜のようで。
 全てを話してくれたアユリの心にようやく触れられて。
 蘭とアユリにとっては生涯、忘れ得ない一夜になった。   
 






 





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