河畔に咲く鮮花  




 「そうか、唯。分かった」
そこまで唯に言わせた春ももう反対することはなかった。
「こ、殺すって嘘だよね」
 蘭の渇いた声に春は一瞬、抱く腕の力を強める。
「大丈夫だ、蘭。最後まで諦めるな」
 雪は顔を上げて心配さすまいと覇王らしく元気づけた。
「元気なようだから、少し大人しくしてもらおう。処刑は明日行う」
 春はもう一度、顎をしゃくって自分の兵隊に合図する。雪は大勢から殴る、蹴るの暴行を受けて、その場に沈んだ。
「止めてよ! もう止めてっ!」
 血だらけになる雪に手を伸ばすが反応はない。
――お願い……もう傷つけないで
 また雪は自分の為に、傷を負い、その血を流す。
 暴漢に襲われた時も、背中に傷を負った雪は、蘭の為にその高貴な血を流してくれた。
――もうこれ以上……私の為に……
 雪には二度と傷ついて欲しくないのに。なのに、また傷を負わせてしまった。
「雪っ! 雪っ!」
 この手ですぐにでも雪を抱き締めたいのに、それが叶わない。
 それが、悔しくて悲しくて、どうしようもないほどもどかしい。
「意識を失ったか、部屋へ監禁しておけ」
 春に命令されて、雪はずるずると引っ張られて、その部屋を後にした。
「雪っ!」
 床に残された雪の血の跡がやけに悲しい。
 涙で視界が滲んでいき、どうしてこんなことになってしまったのかと悔やんでしまう。
「んーと、険悪なムードを払拭させる為に、今日は祝賀会と行こうよ。僕がすぐに用意するからさ」
 ともが明るい声を出して、電話の向こうの相手と何かを話しはじめた。
 そのともの顔さえも悲しみに支配され滲んで見えた。
「祝賀会なんてする気はない」
 春はくだらないと舌打ちをする。
不機嫌な春を見てもともは上機嫌に口元に笑みを湛えていた。
「なに言ってんの。ここまでようやく来たんだよ。そして明日は晴れて覇王殺しをやってのける、みんな内心は穏やかじゃないよ。僕はね、そう思って準備してあげたんだから」
 ともが電話をして数分、洋館にどやどやと足音が聞こえ、女の黄色い声がところどころにあがる。
 春と唯は眉をひそめて、怪訝にともを見つめた。
 やがて部屋にも女達が顔を出し、手にビールやワインを持ってくる。
 食事もオーダーされていて、次々と豪華な晩飯が運び込まれた。
「これが僕からのプレゼント。今日は大いに食べて、飲んで、気に入った子がいれば抱いてもいいよ」
 ともが言うと、男達の下卑た歓声があがった。
 盛り上がっている伊達の兵隊を見て、春は観念すると今日は無礼講だと言ってのけた。
「こいつも監禁しておけ」
 春は公人も違う部屋へ払い、蘭だけが取り残された。
 春の部屋にも女がはびこり、酒を注いだり、あちこちで香を焚いたりしている。
「お前も一口ぐらい飲めよ」
 春が蘭を抱き抱えたまま、後ろからコップに口つけさせる。
一気に飲まされて蘭はげほげほと咳き込んだ。
 酒に強くない蘭はそれだけでもふらりと目まいがした。
――酒のせい? 体が重い……
 時間を重ねていくと、香の煙が蔓延し、あちこちで女の細い喘ぎ声が耳に届く。
 気がつけば、男と女が絡みあって煙の中、妖艶に蠢く姿を見かける。
――体が熱い……
 実際に、蘭も体が熱く火照っている。酒のせいかと思いきや、それだけでは納得がいかない。
――お香だ。あのお香の臭いが体を変にしている
だるいのか熱いのか分からない状態で、蘭は春の体に自分の身体を預けた。
 春も体にどうやら力が入らないのか、そのままベッドに沈む。
 蘭の意識はまどろみ、ぼんやりと目を開けた状態で、近づく人影を見た。
――誰……?
 ベッドの紗幕は降ろされており、室内から目隠しされている。
 隣には春が寝ているので、春ではなさそうだった。
「ああ、綺麗だ――」
 そう言った声は唯のものと似ていた。
 節くれだった指が蘭の頬をなぞり、丁寧に髪を梳く。
 見上げると唯の端正な顔が落ちて来て蘭の唇を塞いだ。
「体がおさまらない。この香がおかしくさせる。前からずっとお前を抱きたかったんだ。春のモノになれば抱けないから、今だけ――」
 耳元で囁かれてぞくりと背筋が粟立つ。
 だが、力が入らずに抵抗が出来ない。
 唯は熱に浮かされた表情のまま、蘭の首筋を舐め上げた。
「あっ……」
 ぶるりと身体が跳ねるが、唯の厚い胸板に押さえつけられる。
 一分の隙もなく鍛え上げられた筋肉が乗った体は逞しいだけではなく――とても重い。
――身動きできない……頭もぼうっとして……
 蘭を圧倒的な力で組み敷いて、唯は愛撫の手を止めない。
 舌は鎖骨に這わされ、大きな手は蘭の胸を揉みしだいている。
 力の加減が出来ないのか、荒々しく激しい愛撫に蘭は苦しくなった。
「んっ……!」
 きゅっと胸の突起を摘まみ上げられ、体の奥がすぼまる。
 いつの間にか衣服は脱がされ、蘭は唯の執拗な舌攻めにあっていた。
 胸の突起を激しくころがされ、むしゃぶりつかれる。
「おいしい――」
 唯の目も香でとろんと虚ろになっていた。
 待ちきれないのか唯は蘭の下肢に手を伸ばし、荒々しく秘丘をまさぐる。
「まだ濡れていないな」
 唯は不思議そうに首を傾げながら蘭の太ももを割り、顔を間に埋めた。
 ぬるりと熱い舌が秘裂をなぞり、何度も上下に往復される。
「んっふっ……うまい……たまらない……」
 唯の大きな唇で淫唇全体を舐め上げられる。夢中になって蘭の秘部を口に含み、ちゅっちゅっと蜜を吸った。
「はぁ、濡れてきたな。俺のは大きいからほぐさないとな」
 唯は舌を放して、今度は節くれだった太い指を蜜口に差し込んできた。
ずぷりと荒々しく埋められて、蘭の体は飛びあがる。
 それでも体が言うことを聞かずに、弛緩したまま。
 ぐりぐりと乱暴に指を挿しこまれ、苦痛に顔を歪ませた。
「んっ……痛い……」
「えっ……済まない…っ」
 唯が慌てたように蘭の顔を覗き込みあたふたとする。
「……女はもっと丁重に扱うもんだ」
 けだるそうにそう言ったのは、隣で寝ていたはずの春。
 むくりと体を起こして、何度か頭を振った。
「――つっ、春、ごめん。春の女だってのは分かっているけど、どうしてもこいつとしたかったんだ」
 唯が慌てて弁明し、ぐったりしている蘭の蜜口から指を引き抜いた。
「ちっ、一回だけだぞ唯。素人童貞が、下手くそなんだよ」
 春は悪態吐いて、まだ眠そうな目をしながら、蘭に寄って来る。
 広げられた足の間に、繊細な指を埋めて、ゆっくりと前後に動かし始めた。
「――んっ」
 先ほどとは違った優しいタッチに蘭の体は緩む。
 入口付近で優しく抽送を繰り返し、次第に奥へゆっくりと焦らすように埋め込まれる。
「どうだ、いいか?」
春の指は二本へ増やされ、中でばらばらに蠢く動きに蘭は体の奥が痺れた。
「やばいな、まだ頭がくらくらする。あんまりゆっくり時間かけられないな」
 春は忌々しく呟くと、待ちきれないように自分の衣服を脱ぎ捨てた。
「お前は後だ」
 それだけを唯に言い残して、春の体が蘭の太ももの間に割り入ってきた。
 白煙が宙を舞い、蘭の頭の芯もぼうっとしてくる。
 甘い香りが鼻をくすぐり、視界が徐々に霞んでいく。
――体がふわふわする……
 これは幻影なのか、現実なのかどちらかが分からない。
 やがてはこれは現実ではないと思い、力の入らぬ体をぼんやりと眺めていた。
「――ひっ」
 そこに固い肉径が穿たれ、蘭は一瞬だが現実に引き戻される。
 覆い被さっている春の目も虚ろで、気持ちよさそうに、愛しそうに見つめてくる。
「もっと深いところを突いてやる」
 春にそう言われて、蘭の両足は持ちあげられて、肩に乗せられた。
 思い切り足は広げられ、春がその間に深く侵入してきた。
「ああっ……いい……お前の深い場所……きつ……」
 春はうわごとのように囁き、蘭の足を肩に担いだまま激しく抽送を繰り返した。
 体が揺さぶられ、蘭の中からも熱い蜜が溢れる。
「凄い……お前の濃厚な蜜が絡む……お前は俺のものだ」
 春は腰を大きくぐりっと押し回し、蘭の敏感な部分を掻き回した。
「……ここが、いいのか……?」
 弱い部分を見つけられて、蘭の腰は軽く浮いてしまう。
 春はそこから奥を角度を何度も変えながら、執拗に抽送を繰り返した。
「んっ……ふっ……」
 春の声が漏れ、動きが早くなる。その喘ぎは熱に浮かされているようだった。
「しばらく、してないから……すぐに……いきそう……だ」
 春がなまめかしく笑い、首筋から汗を流している。
 弛緩した体と脳で春のことが綺麗だと――そう思った。
「くっ……ああっ……もう……でそう……だ……」
 春の顔が苦しげに歪み、一層動きがはやまる。
 肉径が中で大きく膨れ上がり、最奥まで突きあげた瞬間、春は絶頂に達した。
「ああ……っ……くっ……で…る……はぁっ」
 長い絶頂をむかえ、春は蘭に濃厚なキスを落とす。
「春、もう俺、駄目だ。我慢できない」
 春が蘭の上からどいたことをいいことに唯はそのまま抱きあげた。
「いや……無理……」
 唯の反り勃った肉の塊に蘭の瞳は怯えを刻む。
「済まないな……でも……もう俺は限界なんだ……」 
 蘭は足を広げた格好のまま抱きあげると、唯は立ち上がる。
 逞しい体は蘭の体をいとも簡単に抱き抱えた。
 お互いに向き合った状態で抱き合い、蘭はバランスを取ろうと、唯の首を両手で持ち両足を腰に巻きつける。
「いいぞ……もっとしっかり体を押し付けろ……」
 唯はそれに応えるよう蘭の細い腰を両手で抱えるように持ち、 そのままで立ち上がった格好のまま押し込んできた。
「ああっ……んっ……」
 ぶすりと埋め込まれる唯の肉棒は馬並みという言葉が当てはまる。
「い……やっ……」
 それが遠慮なく肉襞を広げて、押し進む度に蘭は首を振った。 
「無理……入らない……」
 弛緩した体はしっかりと唯に抱き締められ、逃れることを許してくれない。
「そんなんじゃいつまで経っても最後まで入らないぞ」
 春が業を煮やしたのか蘭の背後に回り、ゆっくりとお尻を唯の肉塊に向かって押し込む。






 





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